おひさまの日記
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2005年02月03日(木) アンバランスなバランス

昔、作家、故森瑶子さんの短編小説にこんな話があった。

*****

ある男性がお見合いをする。
会ってみると、相手の女性は女優のような美しさ。
明るく楽しく、でも謙虚で慎み深く、マナーもよく、
こちらへの心配りも素晴らしい。
仕事でもかなりの腕利きの様子。
独立した大人の女性。
非の打ち所がなかった。

彼は一目で彼女を気に入った。
話していくうちに、さらに気に入った。
相手の女性もまんざらではない。
でも、彼はお見合いを断ることにしようと思った。

なぜなら、彼女にはスキがないからだ。
一分のスキもないのだ。
完璧だ。
自分が一緒にいられるような女性ではない。
所詮高嶺の花、そう思ったのだ。

お見合いの席を立とうとした時、
男性は、女性のストッキングが伝線していることに気が付いた。
そして、即座に決めた。
彼女にプロポーズしようと。

*****

私はこの話が大好きだ

男性は、なにもかもが完璧な女性のストッキングの伝線を見た時、
彼女の中にある種のやすらぎや安心を見たのだと思う。
ああ、この女神のような女性だって人間なんだ、って。

すべてが完璧な絶世の美女と伝線したストッキング。
いかにもアンバランスだ。
でも、このアンバランスが、
彼女にとてもいいバランスを与えていると、私は思う。

私はそういうアンバランスによってバランスが取れている人がとても好き。

タカビーで気取ってそうに見えるのに実は面白い、とか、
つんけんしてて感じ悪そうなのに実は小心者、とか、
イケメンなのに字が汚い、とか、
ハイソな感じなのに話すとなまってるとか、
色々、色々。

そういう意味では、私は期待を裏切られるのが好きみたいだ。
ひとりの人の中に両極の要素を見るのが好きみたいだ。
あ、好きになってもいいんだな、そばにいてもいいんだな、
そんな気持ちになれて、そして、親近感を感じられる人が。
一種のシンパシーみたいなものかもしれない。

私が素敵だと思う人達は、
みな、このアンバランスなバランス感を私に与える人達。
まぁ、単に私の好みなのかもしれないけれど。

人は完璧じゃない方がいいんだと思う。
その方が面白い。

それに、もうひとつ、
人は完璧じゃないから人と出会い、惹かれ合えるのだと思う。
自分にないものに嫉妬したりもしながら、
それでも、その才能や情報や力を借りることを学んだりして、
自分や自分の携わるものを、
相手を通して、相手の美点を借りて、まあるくしていく作業ができるのだ。
それはそれは素晴らしいコラボレーション。
ひとりで完璧にやろうとしていた時よりも、
もっともっと素晴らしいものが生まれる。

そして、足りないものを補ってくれた相手が、
それをしたことによって自分の価値を感じる。
それはこちらが相手の要素を受け取ったからだ。
受け取ることで与えたからだ。
相手はこちらに心地よさを感じる。

とてもスムーズな関係が生まれる。

自分が完璧じゃない、できない、足りない、
そう感じるのはとても素晴らしいことだ。
人と愛し合えるから。
人と惹かれ合えるから。
人と協力し合えるから。
誰かと一緒にいる喜びを感じられるから。

自分が完璧じゃない、できない、足りない、
そう感じる時に虚勢を張ってしまうと、人はとても孤独になってゆく。
プライドを守るために、自分のできなさや足りなさ、弱さを隠していくと、
周りの人の付け入るスキがない。
自分がすごくなろう、すごいと思ってもらおう、見下されるもんか、
そう思ってしていることなのに、
逆の評価をされたり、人が離れていくこともある。

できないからできること、足りないから足りること、
そんなふうなのが私は好きだ。
誰かの素敵なところを素敵だと認めてしまって、
それさえも自分のワクワクな計画の要素にしてしまうのが、私は好きだ。

そういうふうにできるようになってから、
私はできない足りない自分が好きになった。

今だって、私なんて、どうせ、どうせ!と涙する夜もある。
でも、そんなぐらんぐらんな自分さえも好きなのだ。
こんなでこぼこちゃんの自分が。

ずっとアンバランスな人でいたいと思う。


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