おひさまの日記
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2004年12月20日(月) だから私はあなたの声を聞こう

こんな仕事をしていると、
エイミーさんの子育てはさぞいい感じなんでしょうね、
みたいなことを言われることも多いけど、
プライベートではあれこれとくよくよし試行錯誤するひとりの母親。

先日も片付けをしないアンナに一発雷を落とした。

アンナは片付けが本当に苦手らしく、
家はいつも遊んだおもちゃだのが散乱している。
子供は多かれ少なかれそうだとは聞くけれど。

キーキー怒りながら、頭の片隅には、
「私何やってんだ?
 こんなことじゃ何の解決にもならないのに…」
なんて、冷静な自分がいる。

ふと、自分の小さい頃を思い出す。

いつもこうして怒られてたっけ。
アンナが泣いているみたいに、泣いていたっけ。
家に帰ると父に自分の部屋の物がみんな捨てられてなくなってたっけ。
恐かったなぁ…
悲しかったなぁ…
ひどかったなぁ…

そして、改めて思う。

父に罰されものすごい恐怖を与えられていた自分。
片付けない自分、そんな自分がいるからまた怒られる。
こんな自分でいちゃダメなんだ。
「お前はダメな子、悪い子、いけない子」
私は、意識の奥底で、今でもそんな自分を罰し続けているのだろう。
父に怒られる原因を作る自分を責め続けているのだろう。
私が私を責める。

だから、昔の私と同じ片付けをしないアンナを見る時、
そこに自分のインナーチャイルドを見ている。
自分が罰し続けているインナーチャイルドを。

そして、声を張り上げて責め、罰する。
私が罰しているのはアンナではない。
紛れもなく自分自身。

これが「投影」や「シャドー」と言われるもの。
相手の状態に自分の奥底にある気付かないものを映して見てしまうのだ。
無意識のうちに、自分に与えている反応と同じ反応を相手に与えてしまう。

自分の奥底に存在する気付かないものへの反応だけに、
なぜ自分が相手にこんなに反応してしまうのかわからないまま、
相手への怒濤のような感情に飲み込まれ、
その感情のままに振る舞ってしまう。
そこに残るのは憤りと悲しみの入り交じった複雑で不快な気持。

他人を見てもここまで感情がエスカレートすることはあまりない。
家族だからだ。
より近く鮮明に見える鏡だからだ。

ひとしきり怒った後、そんなことを冷静に考える自分を取り戻し、
私はアンナに謝った。

「恐く怒鳴ってごめんね。
 お片付けはした方がいいから、それはアンナが頑張った方がいいこと。
 だけど、それを伝えるために、ママは怒鳴る必要はないね。
 ちゃんと言葉でそれをアンナに言えばいいだけだったね。
 だから、怒鳴ったことに関してはママが悪かったよ。
 恐かったね、ごめんね」

恐れや圧力によって人をコントロールしようとしても、
つまり、言うことを聞かせようとしても、それはうまくいかない。

まるで「北風と太陽」だ。

一時うまくいったように見えても、
コントロールを受けた側の心は幾重にも屈折する。
なにかをする原動力が「自分の意志」ではなく「恐れの回避」だからだ。

私はよくわかっていた。
アンナが片付けがなかなかできないのは、
私が「恐れ」を与えることによって彼女を従わせようとしているから。
私が怒りをぶつけて言う通りにさせようとするのは、
彼女にとってはとても「恐い」ことであり、
こちらの意思のみによる「強制」であり、
そこに彼女の意思は存在しない。

そう、私も小さい頃そういうふうにされていた。
自分の中のインナーチャイルドの想いを感じた。

そして、すぅ…っと息を吸ってアンナに言った。

「ねえ、アンナ、
 今までママは片付けろってただ怒ってたけど、
 そんな怒られながらしていたら楽しくないよね。
 アンナはお絵描きが上手だけど、
 それは楽しくていつも描いてるからだよね。
 楽しいと色々なことを自分からしたくなるね。
 それなら、どうしたらお片づけが楽しくなるか、
 ママに教えてくれないかなぁ?」

すると、アンナが答えた。

「あのね、ママ、歌を歌いながらやったら楽しいと思うんだよ」
「歌?」
「うん、歌は楽しいから、楽しくできると思うんだよ」
「そうか、歌かぁ」

私は一瞬「ンな歌なんて歌ってもできないものはできないよ〜」と思った。
でも、アンナがそう言うのだから、そうさせてみようと思った。

それから私とアンナはふたりで「お片付けの歌」を作った。
作っているうちに楽しい気持になった。
ふたりで、うふふ、って笑いながら作った。

そして、アンナがルールを作った。
私は片付けをしてほしい時この歌を歌う。
アンナはこの歌を歌いながら片付ける。
それが、彼女の意思から生まれたお片付けのルール。

それから、アンナは自分が決めたせいか、自分から動くようになった。
そして、ふたりで作った歌を歌いながらキレイに片付けるようになった。
これには驚いた。

私はまた彼女から大きな贈り物をもらった。
自分の意志で生きることの素晴らしさ、その力強さ、
そんなものを見せてもらえた。
片付けみたいなちょっとしたことなんだけど。

ふと思った。
私も小さい頃こういうふうに親にしてもらいたかったなぁ…って。
そんなことをこれからもアンナにしたいなぁ…って。
自分の反応に負けずに、アンナを大切にしたいなぁ…って。

アンナ、あなたは小さな私。
だから私はあなたの声を聞こう。
それがあなたを救い、私を癒す道。
あなたの声を聞いて、あなたを救い、私を癒そう。
私はまだまだなママだけど、これからもあなたと一緒に成長していこう。
そして、小さな私の痛みをぬぐっていこう。

あなたがいるから私は小さな私に出会える。
小さな私はいつもあなたと一緒。
だから私はあなたの声を聞こう。
あなたと私のために。


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