夏目久美の生きてりゃ上等!



夏目久美の生きてりゃ上等!


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●KUMI NATUME●
2002年06月09日(日)    闘う女の子

 あたしらには『看板』が有る。

 何が何でも汚すことの出来ない『旗』が有る。



 まみちゃん。1コ上。

 大阪の大学で。『旗』を掲げた。

 親に、大学を辞めさせられて。実家へ連れ戻された。

 家から叩き出された。

 車も取り上げられた。

 彼女は。独り暮らししながら。

 「久美ちゃーん。人間、何もせんでも基本料金は取られていくのね。
  働くように出来てんのよ。人間は。」

 って笑ってた。

 夏目「も1回しろって言ったら出来る?」

 まみちゃん「出来ん!(笑)」

 夏目「私も出来ん!(笑)」



 私は。高校の時。

 その『旗』を孤立無援で掲げた。

 だから。

 20代前半。

 友達は遊んでて。

 だけど。私らは。

 お腹すかせて。吐いてでも動いた。

 遊ばず。仕事しながら。プライベートは無かった。

 ただ、一途だった。


 どんなに悔しい思いをして泣いても。

 それはいつか誇りに変わった。

 泣いたぶんだけ、私らには『プライド』が出来た。

 『貫く』プライド。


 それは全部。『覆す』ため。


 10年も20年もかかる、一生もんの闘い。


 
 小学生の男の子の兄弟が居た。

 大人びた気を使う子たちだった。

 馬鹿だね。子供時代なんて。今しかないんだから。もっと我儘でいいのに。


 そしたら。訳は解った。

 Kさん奥さま「久美ちゃん。あの兄弟、学校変わるんよ。もう来れんって。」

 夏目「何でですか…?」

 Kさん奥様「今までお婆ちゃんのとこ。おったけど…。両親離婚して。
  訳あって、どちらも引き取れんって。…でも、お婆ちゃんも生活厳しくてね。
  今度から施設に入る事になったんよ…。」



 他人じゃ、私じゃ、何も出来ないじゃないかよっ!!
 そんな財力ないよ。
 悔しいよ。
 泣いたよ。
 同情でも何でもいいよ。知らないよ。

 親が両方引き取れんって、どんな状況よ!?


 私らの闘いは地味でしかなく。
 結果なんて。出るのはずっと先の事。



 うちの師が言う。

 「健気っていうのは、強いこと。強さ。強くなりなさい。」


 だから。待ってるから。
 10年後でもいい。
 ここへおいで。
 私らは、待ってるから。



 だから。私らが負ける訳にはいかなくて。


 「闇が深いぶんだけ、暁は近い。」


 それを信じるしか道なんかなくて。



 

 「誰よりも苦労した人は。誰よりも幸せになれ。」


 幸せなんて。してもらうもんじゃなくて。自分が成るもんだ。


 私らは、そう教えられる。


 逃げられない。
 本当は逃げたくなんかもない。

 時に挫けて逃げてても。
 ずっと待ってくれてる人が居る。

 私らには『四面楚歌』は無い。
 背中にはいつも味方が居る。

 それは、皆が泣きながら手に入れたもの。
 譲れない、もの。


 阪神大震災のとき。
 自分の家を全て無くしても。
 「ここが有るなら、いい。」
 と。
 立ち上がる人。

 自分の親を亡くして。自分も傷をおっていても。
 20代の女の子でも走った。
 だから、走れた。
 手に救援物資持って。どこへでも行けた。


 そんな人この世には居るのに。
 逃げられないよね。


 一生ね。



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