即興詩置き場。

2005年12月29日(木) はじめての王国



空がまだ青かった頃
王国は細く
鉄塔がその役目を終えてなお
行くあてなく錆びていくように

東の空から鳥たちがやってきて
羽を休める場所を見つけられない
王国は
気づかれずに
そのように

滑りのある雨が降って
王国は低く
針金は血肉が削ぎ落とされた痕
鈍色の姿は角度によって
折れ曲がっているが
傷は見えない
傷はないように見える

空が赤く生い茂ると
羽虫の群れに覆われる
王国の
切り取られた視界の未来と過去に
何か見えるような気配がするが
それは錯覚で

新月は逃げ出そうとして
王国は狭く
いつもゆるされている
その確信を持て余し
どこを見れば良いのか
戸惑いながら
照らすことなく
照らされることもなく
焦がれ続けて

こぼれ落ちる雫は
受け止められるものよりも
むしろ穿ち
浸食し
削り倒す
玉座は死に
消えるものさえ消え失せ
明転する空の影に
怯えながら
朽ちていくように
残り続けて
生き続けて


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