昨日あなたが笑った
太陽の光が落ちてきたかと思った
ドント ヘルプミー
さして意味のない行動の一つ
ただ自分の髪をいじって 空をみていた
「お〜い 何してんだーい」
目の前で 白い手のひらがパタパタと動く
それに ゆっくりと頭をもたげて 自分の髪を触っていた手を下げた
「何してるんだって聞かれたら 自分の髪いじくってぼけっとつったってたとしか言いようがないんですがねー」
ほけー と口をあけて ぼんやり返事をする
「おはよう ジェームズ」
一つ間をとって ぺこりと朝の挨拶をした
「どうもどうも ご丁寧に説明してくれてありがとう」
あはは と笑って べこりと一礼して 額に手をかざした
おはようさーん。
どこまでも響く澄んだ声が返ってきた
そういえば なんだ それだ (どれだ)
今日はなんだかどうも鬱な気分だった(そうだ鬱だ)
なので 授業とか全部さぼってみた(今実行中なんだけども)
きゅうに青空が恋しくなったのだ むしろ太陽が
朝起きたらやけに晴れまくってたので
そうだ 今日は もう 色んなものからにげまくったれ
とか思った
だっていいじゃないか こんなに晴れてるんだから
僕くらい逃げても誰も怒らないんじゃないかって思うじゃないか
そうです 僕は今 逃避行の真っ最中なのです
「うーん なのになんで 目の前にジェームズがいるかなぁ」
腕を組んで首をかしげた
僕の計画は完璧だったはずなのに
「わぉ 僕の存在を否定しやがった」
ひどいなぁー あははー こーいつー
ケタケタ笑いながら 僕の額を グー で殴ってきた
それに あいてて とか言いながら 少し赤くなったであろう自分の額をさする
「いえいえ 否定ではなく・・・ なんで見つかったのかなぁ と 」
僕の計画は完璧だったはずだ 誰にも見つからずに ホグワーツから少し離れたこの湖までこれたとおもったのに
そう言うと ジェームズは 肩をすくめて
「君 だめだね 僕には君を探し出す本能ってもんが備わってるんだぜ」
ここに と 自分の胸を指して 真面目な顔していった
「うわぁ 恥ずかしいね そのセリフ」
僕も真面目な顔して 両手で空気を持ち上げた
「なーんて 君が部屋の窓から脱走するのを運良く見つけてしまってね」
あとをつけさせてもろたよ
少しズレためがねを人差し指で戻すと にやりと笑った
・・・ああ 僕の完璧な脱走計画が 最初からばれてただなんて
「ってゆうか ばれるだろ。シリウスたちもバッチリみてたぜ」
あいつとうとうとち狂ったか とかって 心配してたよ〜
チュンチュンと小鳥の鳴く声がする その音に耳をすまして ジェームズが頭をゆらゆらと左右にゆらした
「あー 失敗におわってしまったなぁ」
「何がだい」
「取りあえず逃避行が」
空をみあげれば綺麗な青だ
横をみれば キラキラと光る湖が広がっていた
斜め上を見れば 緑がいっぱいにひろがっている
風を色に例えるならなんだろう? ふと なんかもうどうでもいいことのような気がするが そんな事を思い始めた
「緑かな?いや 青? いやいや 黄色? 薄紫・・・白・・・うーん」
ごにょごにょとつぶやきだしたリーマスにジェームズは怪訝な顔をして その顔を覗き込む
「ごめんなー いっそのこと 鹿に変身しようかねぇ 僕」
その言葉に ぶっと ふきだす
「風の色は鹿色・・・って 何いってるのさ 君」
いきなり 鹿になる とかいいだした 目の前の人を凝視した
鹿 鹿 ジェームズの鹿に変身した姿は 僕はとても大好きだった
どこが好きかって言われたら 説明できないんだけど
「あー だって 鹿だったら 自然と一体化じゃん? みたいな」
僕邪魔だよな− よく考えたらー
手をあごにもってきて うんうんと唸っているものだから
「それじゃあ 来た道を戻ればいいじゃない?」
とか思わないの?
とか聞いてみた
そしたら 一瞬で ものすごくかなしそうな顔をしたので
うお 言い過ぎた とか思い 自分の口を右手で覆った
―お日様がさぁ すっごくいとしくなったんだよ 今日の朝 すっごく
理由を述べますと
ちょうど昨日のことだ
笑ったんだ お日様みたいに
―目の前の鹿が・・・
いつの間にか悲しい雰囲気を漂わせていたジェームズは 杖を取り出して
あっという間に 森の動物に変身していた(うわーぃ)
くるくるとした黒い目が じー と自分を見つめている
うわーん おかーさーん 超愛くるしいYO−
鹿の愛くるしさに おおお と 手が知らずとのびる
手が 鹿(ジェームズ) の額に触れるか触れないかのところで リーマスは
「はぁっ!!!!」
などと 気合いのはいった声をだして 手を止めた
その声にジェームズは ビクリと体をふるわせて 後ろに一歩下がった
鹿が いや 正確に言うと ジェームズが
昨日笑ったんだ
とても綺麗な笑顔で
だからとても悔しくなった 憎らしかった
朝起きたら 何故だかその悔しさが愛しさにすりかわっていた
なんでなんだ WHY!? 可愛さあまって憎さ100倍じゃないのか 憎さ100倍から可愛さあまってどうすんだ
この気持ちが憎しみから恋に変わったなんて おーい おかーさーん 僕 狼人間のうえに男を好きになっちゃいましたー
・・・いっそ清々しいな
ぐるぐると自分の世界に入り込んだリーマスを心配して 鹿に変身したジェームズが リーマスの腕に頬をすりつける
きっと心配してくれてのことだろうが
―逆効果だ
ああ もう そうだよ 僕は 授業とかそんなんから逃げたんじゃなくて
君から逃げたかったんだよ
それなのに 君が僕を見つけたりするからさ 心配なんかして 僕を追いかけてきてくれたりするんだからさ
助けたりしなくていいんだよ 君にはもう充分救われてきたんだから これ以上はいいんだよ
知らずのうちに 頬に涙がつたっていた
ボワン と音がして ジェームズが鹿の姿から もとの姿に戻る
何も言わずに 僕の頬にそっと触れた
その指が 僕の涙をゆっくりとすいこんでいった
「一生のお願い 聞いてくれる?」
風が吹いた
キラキラとひかった水面の反射を映して ひらひら舞う葉っぱを照らした
「笑って くれないかい?」
風が吹いた たぶんきっと 風に色があるのなら
涙の色を していると思う
―あの子のためじゃなく 自分のためだけに 笑ってほしかった
ある日太陽の光が 僕に落ちてきた
その次の朝 その光が 輝きをなくして闇におちた
恋は痛い 恋は悲しい 恋は苦しい 恋は寂しい
ほろり落ちた涙 顔をあげると 君が一生懸命笑っていた
僕の頬にふるえた手をそえて
そんな君を見て 僕はまた いとしいと思った
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ジェリリなのかな でもリジェなのかな 気持ちはとめられないのかな 自分はいいっておもっていても やっぱり見ていてほしいよ
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