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僕の、場所。

今日の僕は誰だろう。



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雨が降る前の夜

どうしようもなくどうしようもなく、きっと僕はただ淋しいのだということに気付いて驚いてみたりする。ひとりの時間が好きで、ひとりで黙って音楽を聞きながら木陰を散歩したり本を読んだりキーボードを打ったりするのが大好きな僕は、それでも誰かの手に触れたいと心から望んでいるんだ。笑顔のかわいいあの子は最近とてもキレイになった。どうしてかって、それくらい知っているけれど。みんな幸せそうに笑っている。あの子だって今日は「お疲れ様です」と微笑んで言い残してはやく帰ってしまった。あんまり見ないけれど来週の会議の準備はいつやっているのだろう? そんなにあの創作に根を詰めている彼氏が好きなのだろうかとぼんやり、あの男はどんな風にあの子を愛しているのだろう。どんな風にあの子は喜ぶのだろう。嗚呼。思わせぶりな発言をしてそのままのあの人は、あの人は、僕なんて知らない世界で研究に熱中している。そんな後姿をずっと眺めていたいと思ったり思わなかったり。
悶々としながら、君の家の前でバスを降りて君を驚かせる事もなくぼんやり終点で降り立っていつもの本屋で探し物。偶然に知人に出会って驚いた。どうやら誰かへのプレゼントを探しているようで、空中写真の本をキープしているそのセンスはなかなかだと感心。僕は特に収穫もなく、彼らと夕食を共にするとやっぱりそれなりに気が晴れて、ふと気付けば僕は笑っている。どうしたというのだろうか、あの鬱々としたやり場のない、雨雲の変形したような厭世感は、少し軽くなっていた。
ひとりは好きだけどきっと孤独は嫌なんだろうと思う。誰からも、こちらが好意を寄せる相手からも意に介してすらもらえない、視野に入れてもらえない、今一体どこで何をしているのか僕には分からないという状況、ましてや一時期は僕にだけは分かっていたというのが拍車をかけ、しかしそれにすら慣れてきてしまっている自分が一番嫌いなのだとも思う。隣に誰かがいなくても平気になってしまった。あいつとあの子が今頃もしかすると仲良く平和にテレビでも見てくつろいでるのかもしれないと思ったところでやりきれなくなって涙することもなくなった。そんな程度の好意だったわけじゃないのだが時間というのは万能薬で、どんな思いだって希釈してしまう。そしてそれは拡散する一方で決して収束なんてしない。熱力学の法則の何番目だっただろうか。それでも希釈すると薄くなったそこには簡単に他の何かが流れ込んできてしまう。孤独に対する恐怖であったり、別分野への興味関心であったり、不思議な事にまた君への恋慕だったりするから可笑しな話。
しかし今やはり僕が欲しているのは、誰かの眼差しであったり笑顔であったり寄り添う肩であったり、あるいは酔いと眠気をもたらしてくれるアルコールだったりする。きっと車が出せたら海に行くのだろうなと思う、雨が降る前の夜。


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