熱にうかされながら
温かい湯気の向こうに、奴の手。
馬鹿だねぇと大げさにため息ついて
見舞いに来る、こいつ。
馬鹿馬鹿うるさいってお前一体何しに来たんだよ。
君が馬鹿のくせに寝込んでる聞いたから、からかいに。
飄々と答えてくれやがる、こいつはありがたい友人だ。
皮肉めいた笑みと共に現れて
俺には真似のできない手際のよさで粥を作り
ちゃっかり風邪薬まで持参して来ており
更に俺が寝てる間にスープまで作りやがった。
きっとこういう奴が女に受けるんだろうと思う。
しかもそのスープがめちゃくちゃ美味い。
ちくしょう、正直悔しい。
さっさと出てこないと代返してやらねーからなと憎まれ口残して
奴は帰った。
…何なんだ奴は。
湯気の立つスープに歪んだ俺の顔が映る。