僕の、場所。
今日の僕は誰だろう。
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風化した記憶の中で ただひとつ
鮮明な
あの唇の動きと ふわりと風を含んだ髪
誰だっただろう
目を開ければ机の上で 散乱した書類と筆記具とガラクタと 遠くで電話が鳴り誰かが受け誰かを呼ぶ声 常に人の話し声が途絶えることなく
俺は重要な書類を作っているところだった
お役所仕事の効率の悪さに舌打ちをしながら 夢なのかなんなのか 一瞬意識が飛んで別世界に行っていたような 色褪せても美しい写真のような
何だったのだろう
「そっちは危ないから。いらっしゃい」
まぁいいかと、目前の作業に取り掛かる …この時代に計算機とボールペンで書類かよ。 文句垂れても始まらない 頭を切り替えて集中する
「いい子ね」
上司に見せると、細かいミスを指摘されて 内心辟易しつつもやはり謝り礼を言い ふりだしに戻る
――患者の具合はどうだ
白い人。
――そうですね、今は安定期ですが…
白い人。細い人。
――何か問題でも?
窓。ブラインド。
――問題というほどではありませんが、時折表情が虚ろになります
カルテ。
――ふむ…
白い人。眼鏡。観葉植物の葉。
――個人的な見解を述べさせていただければ
撫でる手。
――?
近づく人。
――患者はすでに戻って来ないかと
行ってしまう人。
――どういった観点から、そう?
白い人。白い人。
――もう遅いのです、もう……。
ナンデ ナクノ?
だーいじょうぶよアタシだって平気だもん え? 名前なんてどうだっていいでしょアタシはアタシよ そんな驚いた顔しなくたっていいじゃないの 知らなかった? 良いでしょキリフダって それより知ってるわよアタシ全部 い、やよ教えない そんなのあの子のほうが得意でしょ 知らないふりをしててあげるのがアタシだもの
すべてが バラバラになる
あれ、俺何してたっけ。
ま、いっか。
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