覚 書

日記だったり日記じゃなかったり

2005年08月14日(日)  亡国のイージス観てきました。

面白かったです。原作は読んでない。
以下ネタバレするかもしれないので観てない方はご注意。





福井晴敏という作家さんはライトノベル作家なのかどうかすらわたしは知らないんですけど、硬い文章・堅い内容で一見ライトではないものの実はライトノベル、というか、ライトノベル読者向けの作品を書かれる方、という印象を持っていて、映画観た今もその印象は全然変わんないんですけども。とりあえず若めのオタクに需要のある作家さん。

えーとぶっちゃけ沈黙の艦隊・ジパング系のかわぐちかいじ作品読者、(観たい観たいとずっと思ってるもののわたしは未見ですが)劇場版パトレイバーなどを観ているある程度年期の入ったオタク諸君は新しい感動が得られるとは思ってはいけないかも。
わたしは最初から福井晴敏さんという方の自衛隊関係の作品は、ここらへんの作品を読んで来た年代の作者のここらへんの「日本の軍事(自衛隊)の孕む矛盾」「日本人の戦争観」などを描いて来た作品へのオマージュであろうと思い込んでいてその思い込みのまま観てたので期待が外れたなんてことはなかったし、むしろそれらの作品を知らない非オタの方や若いオタク向け作品としては複雑過ぎず、だからといってライト過ぎずに上手く過去の傑作のテーマや描かれていた葛藤などを抽出して纏めた大変に巧い造りの作品だと思いました。頭から終わりまで硬派で通していたためかあざといという印象もない。

なので、自衛隊関係作品に初めて触れる方にはとてもオススメするし、そうでない方には気楽にオヤジに燃えろと笑顔で言います(オヤジかよ)。
いやーオヤジ映画だった…!(満足)
ただよく解んなかったのは中井貴一の娘(?)なんだかな女の子が。

白兵戦の痕(なのか殺され掛けた痕なのか)の首の傷とか、如月への熱い視線とかちゅーとか中井貴一の回想にあった野球観戦(?)のシーンとか全然解んなかった。
多分原作にそういうのを絡めたシーンがあるんだろうし、もしかすると如月はほんとに少年時代に一度拉致されててそのときに知り合ってどーのこーのとかそういうエピソードがあったのかもしれないんだけど、えーとそこらのエピソードが入らなかったのならあの女の子自体ずばっと削って良かったんじゃないの。彼女がスクリューに巻き込まれて死んだあとに中井貴一が唐突に行動を起こしてみたりしてたけど貴一の行動の原動力の一部に使うなら、如月との絡みは削って中井貴一との絡みに使うべきだったと思う。
大変に中途半端。マジいらねぇあの子。

真田広之は凄くよかったです。オヤジ最高。オヤジタフ過ぎ。瞬発力はないし最初っからぜいぜいはあはあ言ってんのに動くのかまだ動くのか! みたいな。タフだ……さすが現場の自衛官……。
若者とオヤジが凄い好きなので、仙石と如月の絡みはにやにやしながら観てました。というかそこが一番見所だった(そうですか)。あと娘さんに電話とかねー運動会行けないとかねーお父さん…! みたいな。
ところで如月薄過ぎかも。原作でどの程度の扱いなのかは知らないが、映画では準主人公的位置だったように思うのでもちっと目立つ役者さんでもよかったような?(んじゃなければも少し目立つ演出があってもよかったような? 貴一側の人間と似たスタンス・似た精神構造というのを踏まえたキャラなんだろうけど、そこがうまく機能してなかったというか……ちょいと印象薄かった。残念)

宮津副艦は基本通りだけどいなくてはならない役のひと。寺尾聡はいい役者さんだなあと思います。何より顔がいい。

佐藤浩市もよかった。でも一徳さんが凄くよかった……!(笑)
このふたりもセットでよろしゅうございました。
あとは風間の死に様が凄いかっこよかったです。
それから貴一の部下で自殺する彼とか。足折れてるのに表情ひとつ変えず、みたいな。それにあそこのシーンで貴一と仙石が被るんですよね。国も思想も違うけど、貴一もほんとは部下を凄く大切にしていて生きている部下を置いてけないという。貴一の葛藤は描かれてなかったし必要ないと思ったけど、貴一も葛藤しているのだというのが垣間見えるああいうシーンがも少しあってもよかったかも。どっちが正義どっちが悪とかでは語れないのがこういう系統の作品だと思うし。

ところで一番最初にぐすんと泣けたのは「トメばあさんになんて言ったらいいんだ」です。おばあちゃんと孫……!(泣)
老人と若者にも弱いわたし。

そして吉田栄作はどこにいたのであろうか。……エンディングロールで「へ?」と思いました。船務長……解らん……。


総論。イージス艦2艦もトんだら今のご時世かなりヤバいと思います。
あ、えーと、面白かったので観てもそんな損ではないかと。オッサン好きなら是非。あと巧くまとまったヒューマンドラマ観たい方も是非。どっちかってーと人間模様とかのほうに比重偏り気味なので思想とか政治とかそゆのはそれほど入ってません。あと葛藤もそれぞれそれほど深くなく、巧く抽出して描いてあるので胸がぎりぎりするようなこともない代わりにさらりと観れます。エンタメ要素が入ってるというかエンタメなのか?
取り敢えず原作読みたくはなりました。あの女の子が出張ってなければいいなーと思います。戦争物に色恋はいらない派です。それぞれの胸に秘めていればいい派です。恋人の写真を取り出して上官に自慢したヤツは死ぬ法則です(そうですか)。

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風樹夙 [MAIL] [紙の上へ]

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