月の輪通信 日々の想い
目次|過去|未来
今日、どうしてもやらなくてはいけない大仕事とか、 明日、どうしても会わなければならない嫌なヤツとか、 いくら考えてもすぐには答えの出ない、苦い難問とか、 考えれば考えるほど、ウッと息がつまりそうになる暗い不安とか、 パラパラと手の中から零れおちていくのをただ見送るしかない希望とか、 鍵のかかる箱に入れて、遠くに置き去りにしてしまいたい自己嫌悪とか ワッと叫んで逃げ出してしまいたくなる、日々の限りないルーティンとか。
そんなものを、おそらくは私より数倍たくさん抱えているはずなのに、 なぜこの人は、逃げもせず、立ち続けることができるのだろう。 日に数時間の短い仮眠を貪るように眠る人の寝息を間近に聞きながら、 土と釉薬で荒れた手にマニキュアの剥げた指先を重ねる。 この人のこの手に、私は守られているのだ。 私のこの小さな手は、この人の何を支えていくことができるのだろう。
私たちはまた、この難所を越えていく。 きっとまた、越えて行ける。 だからお願い。 「大丈夫。」と言って。
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