月の輪通信 日々の想い
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男の子たち、朝から剣道の市内大会。 昨日、部活の先輩たちと昇段試験に出かけていったオニイ。 実技合格、形不合格の「めでたいような、めでたくないような」微妙な結果。気を取り直して、古巣の道場の剣道大会の試合に臨む。
ゲン、小学生高学年の部、2回戦で負け。 最近不調を自覚しているゲン、悔しそう。
オニイ、高校一般2段以下の部に参戦。 まさかの2勝。思いがけず3位に入賞。 先日来の「剣道漬け」の特訓が功を奏したのだろうか。 久々に見るオニイの剣道。 たった半年見ていなかっただけなのに、切り込むスピードは速くなり、鍔迫り合いになっても力負けしない粘り強さが見られるようになり、そして何よりも気合を入れる掛け声が獣のような太い唸り声に変わっていた。 中学時代には、体も小さく、なかなか勝てなかっただけに、見ている親も感慨無量。 一勝目をあげたあと、下がってきたオニイが親指を立てて、小さなガッツポーズを作って見せた。 ホントは勝ってガッツポーズは、剣道では反則なのだけれど。
今日の試合には、オニイが小さい頃にお世話になっていた老剣士K先生が見に来ていらっしゃっていた。 小学1年のオニイに、竹刀の持ち方から礼の作法まで入門の手ほどきをしてくださったK先生。今はご高齢で道場の稽古でお見かけすることはなくなってしまったけれど、オニイはこのK先生を尊敬していて、今日もいろいろとアドバイスを頂いて感激していた。 K先生もまた、オニイが高校に入っても剣道を続けていることを聞いて、とても喜んでくださっていたようだ。 「とにかく続けることだ。途中でやめたらあかんぞ。続けていれば、必ず実る。」 K先生は古武士のようないかつい手で、オニイやゲンの肩をワシワシと叩いて、励ましてくださった。
6年生のゲンは、このごろ同じ道場の後輩たちの剣道や練習態度などに対する愚痴や不満をよく漏らすようになってきた。 「○○は普段の練習には来ないのに、試合の時だけ来るのはずるい」とか「××はわざと防具のないところに打ち込んでくる」とか・・・。 近頃、道場には低学年の初心者が増え、ゲンたちのすぐ下の世代の子たちの上達が目覚しい。先輩としてにらみを利かせる役目が回ってきたゲンたちには、居心地の悪いこともあるのだろう。 それも自分の成績不振への焦りの裏返しでもあるのかもしれない。
毎回、ゲンのグチを聞いていると、親もついつい、 「いくら強くったって、ちゃんと地道な練習や先輩後輩への気配りを軽んじてちゃダメよね。」とか 「やっぱりサボりがちの子は、太刀筋が荒れてくるわね。」 とか、慰めモードに入ったりしてしまうのだけれど、でもそれはそれ。 本当に強くなるためには、どこかなりふり構わず自分の道を守る部分も必要なのかも知れない。 小学生のゲンには、まだその辺の割りきりがなかなか難しい。
少し前のオニイなら、同じような立場に立ったとき、母が「おー、よしよし、アンタの言うとおり。しょうがない子達だねぇ」なんて一緒に愚痴ってやると素直に慰められていたものだった。 でも、今日、同じことをゲンに言ったら、横で聞いていたオニイがびしっと言った。 「あいつらはあいつら。 そういうスタイルなんだから。 グチグチ言っても自分が強くなるわけじゃないよ。」 母、びしっと叱られてしまった。
うわっ、かっこいい。 武士の風格、あると思わない? 周りに惑わされて、羨んだり愚痴ばかりいっていても仕方がない。 要は、自分自身がどれだけ厳しく鍛錬していくかということ。 オニイはそのことを、厳しい部活動の稽古のうちに学びつつあるのだろう。 慰めるだけの母親が教えることのできなかったことを、ちゃんと学ばせてくださる環境をとてもありがたいと感じた。
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