月の輪通信 日々の想い
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2006年08月17日(木) 都会の子、田舎の子

お盆休みが終わって、ようやくオニイの部活も通常モード。
工房の仕事も今日から本格始動。
子どもたち、そろそろ宿題のことも考えなさいよ。

午前中、東京の弟家族が、我が家へ立ち寄ってくれた。
今年は我が家は実家の両親と旅行をしたので帰省はなし。車で帰省してきた弟家族は帰宅途中にわざわざお土産を届けにうちへきてくれたのだ。
今回は愛犬のクロエちゃんも後部座席にケージを積み込んで同伴のドライブ帰省だったという。
ほほう、幼児連れの3人家族なら、普通車でも愛犬スペースを確保できるのかと毎回引越し荷物のようなギュウギュウ詰めワゴン車で帰省する6人家族の主は笑う。

姪っ子Aちゃんは都会の子。我が家へ来る途中の山道で、カーナビの画面から道路の表示がなくなったのを見て、「絶対間違ってるよ、戻ろうよ」と不安そうに訴えたという。
そう、我が家に通じる道路は途中から最新のナビでも道路の表示がなくなってしまうマイナーな道なのだよ。
そういえば、街のきれいに舗装された地面に慣れたクロエちゃんも、雑草石ころだらけの田舎の地道の感触に戸惑って、心なしかうろたえている様子。それとなく腰が引けてるようで愛らしい。

「ちょっと川でも行ってみようか。」とゲンやアプコがAちゃんをいつもの遊び場の水場へ誘った。いつもゲンが魚をすくったり、アプコが笹舟を作って流したりする場所。
川に着くと、すぐにゴム草履のままでジャブジャブ水に入って喜ぶうちの子たち。
でもAちゃんは尻込みしてなかなか水に足を入れられない。ほんの足首くらいの深さの小さな川なのに、ちょっと尻込みしているようだ。自然の川で遊ぶ経験はあまりないのだという。とってもおしゃれなゴム草履はいてるのにね。あ、ちがった、街の子が履いてるのはミュールって言うのかな。
ゲンは知らぬ間にどんどん川を下って行って、秘密の穴場で大きな川魚や沢蟹を捕まえてきては、Aちゃんたちに得意げに披露する。アプコは川底の砂を両手で掬って、お団子を作るのをAちゃんに教えた。
小さい頃にはザリガニ取りもたっぷり楽しんで育った弟が、ざぶざぶ水に入ってAちゃんを川の中に誘った。はじめはパパの腰にしがみついてこわごわ水に入ったAちゃんも少しずつ慣れ、ゲンが捕まえてきた川魚のお腹を指でつついたり、岩場渡りにちょっと挑戦してみたり、ようやく楽しくなってきたところで、残念、時間終了となった。

川から上がっても、ちょろちょろ走る尻尾の青いトカゲを見つけたり、大粒の黒アリを指差して目を丸くしたり、都会の子には珍しいものがたくさんあるらしい。
水路に浮かべた笹舟を追いかけていく子どもらの背を追いながら
「こんな短い時間じゃもったいないな。」と弟が言った。
うちの子供たちが、小さい頃から当たり前にながめている川の流れ、山の景色、小さな虫や植物が、都会の子にとっては珍しく楽しい驚きなのだなと言うことにいまさらながら改めて気がついた。

ところで、私たちの住む田舎町では、先日、本屋さんが閉店した。
子どもたちが立ち読みに寄ったり、新刊の文庫本を物色したりできる手ごろな規模の本屋が、私たちの町にはもう一軒もなくなってしまったのだ。
子どもたちが自力で行くことのできる本屋がない街って、文化のかけらもない感じがするよなぁと寂しい思いに駆られてしまう。
そういえば、こういう田舎に生まれ育ち、人ごみの雑踏が苦手な家族で成長する我が家の子どもたちは、いまだにディズニーランドやUSJの賑わいを知らない。
休日に大きなショッピングモールに遊びにでかけ、おしゃれなジェラートを食べながら歩く楽しみも知らない。
見知らぬ本の海に溺れそうになる都会の大型書店のワクワクする混雑も知らない。
いわゆる街遊びの楽しみをあまり経験することなく大きくなる子どもたちに、ちょっぴり申し訳ない気がすることもたびたびあった。

けれどもどうなんだろう。
気軽に街遊びを経験できる環境に育つことも、徒歩1分で沢蟹取りのできる山の中に住むことも、子どもたちにとってはおんなじくらい楽しいことなのかもしれないなぁ。
6年生にもなって川遊びに興じているうちに相変わらず半ズボンのお尻を濡らしてくるゲン。
太っちょどんぐりのなる木、触るとカイカイになるウルシの木を見分けることのできるアプコ。
少なくともこの子らは、街遊びにはない楽しい遊びのネタを身の回りに豊富に与えられて育っている。
それはそれでありがたいことなのだと改めて思う。


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