月の輪通信 日々の想い
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2004年10月16日(土) 秋祭り

15,16日、地域の秋祭り。
ゲンは子どもみこしに、アユコは横笛や御神楽の踊りなどに参加。
子ども会の模擬店やゲームに熱中するアプコも含め、あちこち駆け回る子ども達を追って、あちこち奔走する母。
晴れやかな青空の下、気持ちのよい祭りを楽しませてもらった。

特に今日はアユコ、大活躍の一日。
去年から参加している地域の「文化財振興委員会」での、横笛の披露。
小学校の5,6年有志の和太鼓演奏や御神楽の踊り。
いくつもの演目に掛け持ちで出演。
日頃つんできた練習の成果を披露するアユコの雄姿を晴れがましい思いでビデオカメラで追う。
こつこつと地味な練習を重ねてきたアユコの努力が思われて、母感激。
自分の持ち場を得て、十二分にその役割を果たそうとするアユコの生真面目さが、緊張にきりりと唇をかみしめて舞い踊る凛々しい姿に重なり、思わずウルウルとなってしまった。

「文化財振興委員会」にしても小学校の御神楽や和太鼓にしても、小学6年生の多感な時期に、これほど熱中して心から打ち込める物に出会えたアユコは幸せだなぁと思う。
そういう出会いの機会を用意してくださった指導の先生方の存在もありがたい。
ことに地域の「文化財振興委員会」は名前こそ物々しいが、地域の有志の方がボランティアで休日の夕餉の前の憩いの時間を何時間も費やして、子供たちの演奏や獅子舞の踊りを指導してくださった。
子供たちにせっかく一本ずつ横笛を支給し、苦労して音が出せるようになっても、1度か2度、祭りの本番を経験すると、中学に進学して部活動が忙しくなったり、友達との遊びやほかの稽古事を選んだりして、なかなか長続きする子どもが得られない。
下の子達に指導できるだけのリーダーが育てにくいという難題が常にあるのだという。
中学になっても活動を続けている数人の先輩達を見上げて「中学生になっても笛の稽古は続けたい」と宣言するアユコの中には、これまで指導してくださった先生方の熱意に少しでも応えたいという想いがあるのだろう。
「誰かの期待に応えたい」という気持ちが、「伝統を守る」「未来へ引き継ぐ」という行為のかなり大きな動機となっていくのだなぁと思う。

子どもみこしの先導役の天狗の役は毎年、村の長老格のかなり高齢の方が務めておられる。衣装をつけ面をかぶって、20センチ以上もある一本歯の高下駄を履いて数キロの道のりを練り歩く。
「来年こそ引退か」と毎年うわさされながら、今年もやはりいつものなじみの天狗さんだった。祭りが終わった普段の日にも、地元のおかあちゃんたちはひそかにこの老人のことを「天狗さん」と呼ぶ。実は私自身、天狗さんのフルネームを知らない。
昨年、天狗の後継候補として中学生の男の子が一人、予行演習がてら天狗さんの後について高下駄を履いてみこしの道中に参加した。今年は若い天狗さんの初デビューかと楽しみにしていたが、やはり今年もなじみの老天狗さんだった。どうやら後継候補の子も途中でやめてしまったらしい。
自分自身の勉強や部活動など、育ち盛りの子ども達の環境は変わりやすい。
何年も何年も変わらず務めていく天狗さんの後継は、発展途上の子どもにとってはきっと重過ぎる大役だったのだろう。
幸い、高齢の老天狗さんはまだまだ元気に先頭に立ち、ここぞとばかりに采配を揮い、先導の役割を事故もなく務められた。
多分、今年も「来年こそは引退するぞ」とおっしゃりながら、背筋を伸ばして天狗さんになりきっておられたのだろう。一つの役を長年こつこつと務めておられる方には、独特の強い意志の力が感じられる。
それこそが「伝統」を支える大きな力なのだなぁと改めて思う。
そういうことを間近に見せていただいて、何かを学ぶ事の出来る子ども達もまた幸せである。

大役を終えてホッと脱力したアユコが、貰ってきた白足袋をお洗濯に出した。
「この足袋、来年も使えるねぇ」といったら、「来年はきっと小さくて履けなくなってるかも・・・」とかえってきた。
どうやら来年もアユコは笛を続けるつもりらしい。
でもそのときのアユコは今年より一回り大きくなった中学生のアユコなのだ。
「アユねえちゃん、笛も踊りもかっこよかったねぇ。アタシも大きくなったら、アユねえちゃんとおんなじこときっとするよ」
とアプコがささやく。
「そうねぇ、楽しみだねぇ。」
小さな「伝統」が我が家にも生まれたかも知れない。


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