月の輪通信 日々の想い
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2004年06月08日(火) 医者通い

あちこちの医者通いで忙しい。
プール前の健康診断で子供たちがそれぞれに「大切なお手紙」を持ちかえってくる。耳鼻科1件、眼科2件、皮膚科1件、それに歯の詰め物がとれた私の歯科が1件。
それにオニイの過敏性ナントカの後半戦は、ほとんど医者との見解の相違との闘いに多くのエネルギーを費やした。

元来、私は自然治癒力信仰派である。
おたふく風邪の予防接種も「幼いうちに罹って、自分で免疫をつければよし」と今に至っている。オニイやアプコのアトピーも「そのうち、皮膚も強くなるわ。」とほとんど市販の保湿クリームを時々擦り込むだけでやり過ごしてきた。
少々の風邪や腹痛くらいなら「寝て治せ。」と取りあえずおでこを触ってみて寝かせてしまう。
4人兄弟は、病気になってもなかなか医者には行かない。子どもらが幼いうちは通院そのものに恐ろしくエネルギーが要ったし、第一医療費の負担が馬鹿にならない。
「がんばれー、自分で治せー。」
たま〜に本当にしんどくなって、本人が「医者に行ったほうがいいかも」と言い出したりして、アタフタと近所の医院に連れて行ったりする。

一方、父さんは私よりもう少しまじめに医者に頼る。
体調の不良が続いて、仕事に支障が出そうなときには知らぬ間に保険証を持って,かかりつけの医院に出かけていく。
子ども達の調子が悪いときも、私より先に、見かねて医者へ連れていってくれたりする。
「病気のときには、父に泣きつく」が我が家の通院の鉄則になりつつある。
いいんだか,悪いんだか。

今回のゲンの耳鼻科通いは間が抜けている。
彼は耳掃除をしない男なのだ。だから数年に一度、「耳垢栓塞症」という大層な病名を貰ってくる。要するに「耳あかが溜まりすぎ」というやつだ。
「ほれ、見てみ」と耳鼻科へ引っ張っていき、数年分の耳垢を一度に取ってもらう。今回は、頑固な耳垢を取ろうとして粘膜のどこかに傷がついたらしく、ポリープだか外耳炎だかで通院が長引きそうだ。
くだらん。実にくだらん。不本意な病院通いだ。

アプコの皮膚科は、アトピーの掻き壊しだ。
アトピーの子は水いぼやとびひになりやすいらしく、園からは「プールを前にお医者様によく見てもらってくださいね。」とご丁寧な電話があった。
「水疱瘡のあとはあるけど、今のところ水いぼはなし。プールもOK」
との診断でかゆみ止めの塗り薬を貰って、¥2.030。
プール前検診って、園と医者との間になにか利害の一致があるのかしらん。
ぶうぶう。

我が町は小さな地方都市なので、専門医の数も限られている。
「あそこはヤブよ。」とか、「あそこは待ち時間が短くて済むわ。」とか、口コミ情報で数少ない医院の中から、自分のかかりつけ医を探す。
あちらで腕がいいと評判のいい医者が、こちらでは「偉そうで横柄」と言われていたり、こちらで「敏速,お手軽」と評判の医院があちらでは「誤診が多い」とダメ出しされていたり。
なかなか自分にあった医者、症状や状況にあった病院に出会う事は難しい。

オニイが最近お世話になっていたのは、近所の内科医である。
おじいちゃんおばあちゃんたちの主治医でもあり、父さんもしょっちゅうお世話になっている先生だ。
個人病院ながらも、たくさんの患者をパキンパキンと的確に診断し、高度な検査や他の専門医の診断が必要となればちゃっちゃと紹介状を出してくれ、風邪がひどくなっても仕事が休めないときには気前よく点滴を打って取りあえずその日1日限りの元気を処方してくださる事もある。
いわゆる「ホームドクター」というやつだ。

オニイの下痢が始まったとき、取りあえず父さんが自分の診察のついでにオニイを連れていってこの先生の診察を受けさせた。
「ストレスによる過敏性腸症候群」と即座に診断を下し、治療や検査のスケジュールを組み、気分的に沈みがちになる親の方にも叱咤の檄を飛ばしてくださった。
当初、その自信たっぷりな診療方針に、弱よわの父母はおろおろと「ついて行きます」状態だった。
けれども、オニイが体調不良が長引き、学校にいけない日が続いて、なんとなく父さんも私もこの先生の診療についていけなくなってきた。
「精神的なストレスが原因だろう」といいながら、まずはからだの器官に何らかの病気が出ていないかの検査を優先し、「心療内科」の受診の必要を尋ねると烈火の如く叱られた。
「信頼の置ける病院で内視鏡検査を・・・」と言われて、遠くの病院を紹介され、「大事なボンのことだ、忙しくても連れていきなさい」と念を押された。
前日の絶食や下剤など検査の準備の処置を済ませ、さて検査当日オニイは相変わらずの下痢で、我が家の玄関すら出ることができない状態だった。とても電車で1時間あまりの病院までたどり着けそうにない。
参った。

「そもそも今、そんなにまでして優先させなければならない検査なのか。」
オニイの内視鏡検査をめぐって、父さんと私は激論を交わした。
根本的には「気持ちの問題」に過ぎないオニイに辛い検査のストレスは本当に必要なのか。
先生の診療態度や言動は本当にオニイの症状改善に適しているのか。
そもそも小児科医でもなく、心療の専門医でもないこの先生に、ずっとついていってよいのか。
しまいには下痢ピーのオニイそっちのけで、「もう勝手にしろ!」状態の激論となって、とうとうその日の内視鏡検査をキャンセルしてしまった。

「オニイ、今日はもう検査には行かなくていいよ。
落ちついたら、取りあえずタッチするだけでもいいから学校へ行っておいで。」
はじめての内視鏡検査にびくびくしていたオニイは、検査をキャンセルして落ちついたのか、前日の絶食でおなかがすいていたのか、お茶漬けをさらさら食べて、自転車をすっ飛ばして学校へ出ていった。
絶食がきいたのか。
父母が夫婦喧嘩になりそうな雰囲気にこれはヤバイと思ったのか。
それとも、自信たっぷりで居丈高な先生との決別で弾みがついたのか。
何がどうよかったのかわからないが、オニイはこの日をさかいに再び学校へ行けるようになった。
たまたま、オニイの心も体もそろそろ快復する時期がきていたのかもしれない。
「1週間、フルに学校へ行けるようになったら1000円あげるけどな。」と冗談で言った交換条件が効いたのかもしれない。
「心配している友達がいるよ。給食食べるだけでも、校内にタッチするだけでも登校してきていいんだよ。」と言ってくださった学校の先生方の気遣いのお陰かもしれない。
なんだかよくわからないけれど、オニイは自分自身の力で長いトンネルを這い出してきた。

とにかく、オニイは再び元気に学校に通っている。
下痢は止まっているらしい。
苦闘の1ヶ月あまりの日々は、いったいなんだったのだろう。
「亭主元気で留守がいい」
と言うけれど、ほんとにまぁ、とにかく普通に元気に登校、登園してくれていると言う事はそれだけでありがたい。 

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