月の輪通信 日々の想い
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2003年05月01日(木) 風薫る

私の大好きな5月になりました。

駅前の見事な八重桜が散って、道路を濃いピンクに染めると、周囲の山は急に緑の濃さを増
し、ハイキング道に涼しい緑のトンネルをつくりました。



ここ数年、この季節は新緑を楽しむと言うよりも、やっかいな侵入者に悩まされる毎日でした。

緑の木々からぶら~んとぶら下がる体調数㎝の尺取り虫。

それも、すさまじい数の大量発生。

緑のトンネルを抜けると必ずその肩や髪に、木から下がった尺取り虫がくっつきます。

ハイキングの女性達がキャアキャア奇声を上げるのも、この尺取り虫が原因でした。

庭へ出ると、咲きかけの草花や木々の新芽にも尺取り虫。

バリバリとお食事の音が聞こえるほどの数のおびただしい数の虫、虫、虫・・・・

庭へ降りるのさえ億劫になる季節でした。

やがて、春の終わり頃になると、わぁっと小さな蝶々(蛾?)が大発生し、尺取り虫はぱたっと
居なくなります。



ところが!

今年は出ないのです。

「そろそろ、来るね、」「まだ来ないのかな。」「今年は遅いのかな。」

そういえば、ちょうど家庭訪問の頃、自転車で我が家へ来られる先生方が、どなたも尺取り虫
の被害にあっておられたから、大発生の時期はもっと早かったはず。

・・・・と、いうことは、今年は出ないのかな。

実際の所、この尺取り虫の大発生はここ3,4年前に始まったこと。

自然のサイクルが、今年は虫たちの異常発生を淘汰してくれたのでしょうか、

そういえば昨年は、道におちた虫たちをせっせとついばむ小鳥の姿がいつもよりたくさん見ら
れたような気もします。



緑の色濃い山に住んでいると、自然の営みのおおらかな波を肌で感じられる事があります。

毎年、同じ場所に芽生えてくる草花や、同じ時期に一斉に花開く名も知らぬ木々。

尺取り虫の大発生、太っちょどんぐりや自生の柿の木の「なり年」は、一年単位ではなく、数年
の大きなサイクル。

人間が忘れた頃に、確実にきっぱりと一斉に変化が訪れます。

そうそう、うちの裏手に永年、青々と茂っていた笹の藪が今年はすっかり枯れ果ててしまいまし
た。

昨年、見たこともない黄色の米粒のような花が一斉に咲いたと思ったら、あっという間に葉が
枯れおちてしまったのです。

お向かいのおじさんによると、笹は60年に一度、花が咲いたら枯れるそうです。

「人間の一生に1回しか花は見られんのや。」

これもまた、スケールのでかい自然のサイクル。



「春になれば花が咲く。」

当たり前の自然の営みが、人の暮らしの根底を確実に流れている。

そんな事を感じさせてくれる春の風です。




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