団長のお言葉
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その日オレはヒロちゃんに電話をかけた。尼崎で今、蛸が釣れているらしいと誘いをかけた。まだまだケツの青いヒロちゃんは難なく騙せたがチャンコは誘っても無駄だということがわかっていた。
彼はオレによって更に海嫌いになったからだ。俺が誘っても悪態を付かれるのがオチだ。こういうときは物腰の柔らかいヒロちゃんを使って彼を誘うべきだ。
しかし結果は同じであった。彼いわく、「そんな確率の低い釣りは、せん。」とのことだった。ほほう、なるほど、冷静ではないか。ならば貴様が後悔するほどの結果をたたき出してやろうではないかと微笑えんでいた。
夜中、サンバーをぶっ飛ばし我々の破滅の行進が幕を開けた。朝イチは太刀魚が釣れているのでテンヤで釣ってアブレだけは回避しようとした。しかし釣れん。なんぼやっても釣れん。竿を曲げたのは隣にいたオッサンのみだった。太刀がダメなら蛸があるとオレは昨日必死で作った仕掛けを取り出し、蛸釣りに望んだ。
仕掛けは連蛸仕掛けだ。ようするに蛸ジグをサビキ状に道糸に何個もつけた仕掛けだ。これを岸壁ギリにつけ落とし込んで誘う按配だ。暫く誘っていたがウンともスンともあたりが無い。苛立ちは募るばかり。釣り方も雑になってきた。次の瞬間、フッと竿の重みが消えた。
道糸が切れたのだ。オレは唖然とし、軽い脱力感を覚えた。何とか蛸ジグを救い出そうとメタルジグを投げたが、そのメタルジグも引っ掛けてしまった。蛸ジグ一個280円。それが6個繋がっていたので1680円。三股スイベル台280円。このロスで実に約2000円が海のゴミと化した。。がっくりしてヒロちゃんの所へ戻った。彼もオレと同じくして蛸ジグを無くしてしまったらしい。
何としてでもアブレだけは回避せねばならぬ。オレはテクトロをしてシーバスを狙った。大体、どのくらい歩いただろうか。アタリもなくヒロちゃんの元へ戻った。オレは彼に呟いた。「アブレようか。」彼は寂しそうな笑みを浮かべため息をついた。気が付いたらドナドナを口ずさんでいた。
マグロ
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