てらさき雄介の日記
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2009年06月02日(火) フェリーとカジノ

香港とマカオは、中国の特別行政区だ。言うまでもなくアヘン戦争以来、香港はイギリスに、マカオはポルトガルに植民地とされていたわけだが、それぞれ1997年と99年に施政返還となった。

完全に資本主義化していた同地域の現状を鑑み、何よりもその有益性を中国政府が認め、今後50年間については外交・軍事を除く分野は、今まで通り政治が行われることになった。

さてマカオは、ある個人のカジノ権益が数年前に切れたこともあり、海外資本を迎え入れる決断をした。その後ラスベガスなどの大手資本も参入し、一見どこの国かわからない風景を醸し出している。

香港からマカオはフェリー(ジェットフォイル)で行ける。港の切符売り場で普通にチケットを買い乗船出来る。違うのは乗船する前に‘イミグレーション’を経なければならないこと。

これは過去の区域を大事にしていると言うよりも、中国と香港、そしてマカオ間の移動について一定の制限を加えたかったためと推察できる。特に中国本土の人が自由に出入りするのは、政治・経済上の都合から避けたいのだろう。

マカオの港に着くと、各ホテルのお迎えバスが待っている。ゆったりと観光と言うよりも、ほとんどがホテルの中にあるカジノ目当てだ。マカオ市民が就く仕事のうち、実に77%がカジノ関係産業。

更には昨年初めて、マカオはラスベガスを売り上げで抜いて、文字通り世界一のカジノ地域となった。数か所のカジノをまわり、カジノ専用ガイドの説明も受けたが、確かに一見では賭博場のいやらしさはなくショービジネスという感じだ。

石原知事などが掲げるカジノ構想には、かねてから疑問を持っていた。過去韓国やフィリピン、ロシアのカジノも見てまわったが、その考えは強くなるばかり。そんな中マカオのカジノを見たかったのは、他と違う特徴があるから。

韓国やフィリピン(他も同様の国が多い)は、カジノを外国人専用としている。これは観光収入を稼ぐことに専念しつつ、国民の生活や、国内の経済に悪影響を与えない工夫なのだ。

マカオのカジノは違う。中国人の出入りを認めている。と言うよりかは、ほとんどの客が中国人だった。しかし各所で説明を聞きながら、多くの客と話した結果、普通の中国人がフラリと来てはいないことがわかった。

まずは上でも書いたが、中国本土からマカオに行くには‘イミグレーション’を通らねばならない。ここを通過する許可は普通に取れるそうだが、手続きを行うという意味で手間はかかる。

またマカオへの船賃や、カジノの最低価格(ほどんど数がない一番安いテーブルでも約1300円からのレート)を考えると、かなりの金持ちしか現実来ることが出来ない。

そして改めて実感した。日本でもパチンコや麻雀は、賭博ではない賭博として、社会のなかで認知されている。しかしこれはレートが決まっている世界。一日勝ち続けても負け続けても、その金額は予想の範囲をこえない。

しかしカジノにある賭博は、上限と下限のみレートが決まっているが、そのなかの掛け金はまったく自由。しかも1ゲーム10秒から30秒で終わる。1時間も賭けていれば、数千万円負けることも(勝ちはほとんどない)あり得るのだ。

これを自己責任というのは、逆に社会の無責任と考える。賭博病という呼ばれ方があるように、これは一種の病気である。病人をつくらないことを、政治はまず考えるべきだ。

百歩譲ってだ。羽田空港が拡張され、アジア関係の国際便が増えたとき、沖合にカジノ島をつくって、あくまで外国人専用とする。これなら旅行者のみの遊びで済むので、かろうじて許容できる範囲かもしれない。

しかしそこまでして必要なのか。いや現在の日本において、日本人立ち入り禁止でつくれるだろうか。否。ゆえにカジノ構想には反対である。またギャンブル病は、金持ちよりも貧しい人こそかかるということも忘れてはならない。

帰りは、同じくフェリーで香港に戻る。羽田と成田を結ぶリニア構想を、神奈川は千葉と共同で研究するそうだが、エコの視点だけでなく建設コストの面からも、水上交通の可能性も探ってみるべきではないか。

【今日一日】
海上交通及びカジノ視察/中国・澳門特別行政区
香港・マカオ間のフェリー(ジェットフォイル)(片道約1時間・約1800円)


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