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■ 人生の終わり
そのとき、僕は19の夏を迎えていた。
知らせを聞いた母は僕を助手席に乗せ、 総合病院に向かって夜の国道を急いだ。 病院に着くまでに、それほど長い時間は かからなかった。
釣りが大好きだったじいちゃんは、そのとき 82歳だった。生まれて間もないときから、僕は じいちゃんにいつもお世話になっていた。 一緒に釣りに行ったり、小さな店でなにかを 買ってくれたりした。
じいちゃんは病気だった。
そして82歳のときの8月18日に死んだ。 長い人生の営みを病院のベッドの上で静かに 引き払った。
誰にも気づかれないように病室を出た僕は、暗い 廊下の椅子に座って、音を立てないように泣いた。 泣くとは思ってなかったので、少し自分に驚いた。
夏の病院内はあの独特な匂いに満ちていて、クーラー のせいで肌寒かった。
僕の中でじいちゃんと繋がっている血が泣いていた。
2003年04月05日(土)
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