家に帰ってきてご飯を食べて、ダラダラしているうちに、
いつの間にか眠りについてしまう。
これは以前からの彼の癖。
一度寝てしまうと、電話がかかってきてもビクともしない。
12時ごろ、そして、12時半ごろ、自宅に連絡を入れてみるものの、
留守電が虚しく応答するだけ。
携帯には電話をしない。どうしてだろう? 分からない。
きっとまた眠ってしまったんだ。
溜息をついて、私は浴槽にお湯を溜める。
心に芽生えた失望に気付かないフリをしながら。
ベッドの上に横になりながら、本のページを捲る。
堕胎をした女の子が、少しずつ再生していくお話。
ハードカバーを1日で読みきってしまった私は、
妙な達成感を抱きつつ、閉じた本を手に持ったまま、思いを巡らす。
今日のコト、本のコト、明日のコト、彼のコト。
突然、携帯の着信音がガランとした部屋に鳴り響き、
驚いた私はビクンと身体を震わした。
彼の着信音だ。
飛びつくように通話ボタンを押す。
受話器の向こうからは、聞きなれたダーリンの声。
「今まで残業だったんだ。何でこんなに時間がかかったのかなぁ」
その声には、少しの甘えが含まれていて、途端に嬉しくなる。
私は彼を甘やかすのが、大好きだ。
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