ダーの傍で過ごした3日間。
途中で大きな喧嘩を一度だけした。
トイレに入った時、長い髪の毛が落ちていたり。
見覚えのない歯ブラシが置いてあったり。
私と行った場所を忘れていたり。
記憶の無いメールの話をされたり。
そんな幾つもの些細な疑惑を、
ダーにぶつけてしまった。
今、冷静に振り返ってみると、
どれも説明の付く事柄なのだけど。
その時の私は、不安に押しつぶされそうだった。
何度か日記にも書いたかもしれないけれど、
私が過去に付き合った人たちは、
皆(ほとんど)浮気をしていた。
そのまま本気になってしまった場合もあれば、
性懲りもなく繰り返す人もいた。
この時に感じた痛みが、緩和することはあったとしても、
忘れることは一生出来ないんだと思う。
それを責めたりはしない。
人の気持ちほど移ろいやすいものはないって、
ちゃんと知ってるから。
認めたくはないんだけれど、ね。
そんな私を一瞥して、ダーは怒った。
ごめんなさい、と謝る私に、
謝って欲しいわけじゃない、と。
少しだけ泣いて、帰る準備を始めた。
行くところなんて何処にもなかったけれど、
何だかココには居られないような気がしたから。
出来るだけ早く家を出よう、本気でそう思った。
荷物を鞄に詰めて小さくなっていると、
「そんな他人行儀にしないで。
他人の家に居るように振舞わないで」
悲しそうに笑うダー。
「ごめんね」
私が再びそう呟くと、
ダーは言った。
ダーを疑うなんて、どうかしてる、私。
ダーは私だけを真っ直ぐに見てくれてるって
ちゃんと知ってるはずなのに。
私の中にある弱い一部分が。
時々顔を見せて。
むくむくと膨れ上がって。
これ以上、深入りしないよう。
これ以上、傷つかないよう。
心の底から信じることに、予防線を張ってしまう。
そんな時が、ある。
馬鹿だな、私って。
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