お茶の間 de 映画
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2004年11月19日(金) 「ニルヴァーナ」物語の切なさ重さと、映像や細部のコミカルさの不思議なバランスに魅惑される。イタリアンサイバーパンクの秀作!

『ニルヴァーナ』【NIRVANA(ゲーム名:涅槃)】1996年・イタリア=フランス
監督・原案:ガブリエレ・サルヴァトレス 
脚本: ガブリエレ・サルヴァトレス/ピノ・カカッチ 
グロリア・コルシア
撮影:イタロ・ペットリッチョーネ 
音楽:フェデリコ・デ・ロベルティス/マウロ・パガーニ 
SFX:デジタリア・グラフィック  
 
俳優:クリストファー・ランバート(人気ゲームクリエーター、ジミー)
ディエゴ・アバタントゥオーノ(ニルヴァーナのキャラクター、ソロ)
セルジオ・ルビーニ(凄腕ハッカー、ジョイスティック)
ステファニア・ロッカ(天才ハッカー、ナイマ)
エマニュエル・セイナー(ジミーの元恋人、リザ)
アマンダ・サンドレッリ(ニルヴァーナのキャラクター、マリア)

ストーリー用ライン


2050年、クリスマスを控えて賑わう都市部。
人気ゲームクリエーターのジミーは本社(オコサマ・スター社)の
データバンクに命がけでハッキングしながら、この3日間で自分の人生がすっかり様変わりしてしまったと回想する・・・。

3日前、12月21日。
ジミーはゲームで稼いだ金で豪奢な暮らし。だが、部屋に生気はなく、無機質で冷たい秘書コンピュータの声が響く。

クリスマスにあわせ、自分が開発したRPG型心理ゲーム“ニルヴァーナ”をオコサマ・スター社は発売予定だが、まだ仕上がっておらず、秘書が急かすが、ジミーは無気力だ。

恋人のリザが自分を棄て、修行の旅に出てどのくらい経つだろう。
心に穴が開いたまま、彼女の残したビデオレターを繰り返し眺めるだけのやるせない日々。

ジミーは景気づけに闇ルートで液体コカインを入手すると、
気をとりなおしコンピュータに向かう。
ニルヴァーナを起動して驚愕する!
自分の創ったゲームキャラクター、ソロが自我を持ち、ジミーに話しかけてくるのだ。
どうやら原因はウィルスらしい。
中華街で殺し屋に次々狙われては死に、また逃げ回る終わりなき日々に、ソロは絶望し、消去してほしい、と懇願するのだった。

愛を失い、生きる目的が曖昧になったジミーは、逃げ場のないメビウスのような世界に生きる苦しみに共鳴し、ソロをニルヴァーナもろとも消去するため、そして、リザを探すため、動き始める。

腕利きのハッカーの助けが必要だ。
そして、リザのビデオレターに、ジョイスティックに逢う、とメッセージがあったことから、治安の悪さでタクシー運転手も逃げ出す
アラブ人街、マラケシュを訪れる。

伝説的ハッカー、ジョイスティックには逢えたものの、クレジット・チップ(クレジットカード兼IDカード)から足がつき、
オコサマ・スター社から執拗に追われるはめに・・・!

なんとか敵をまき、ジョイスティックに話をつけようと、ジミーは
おいしい話を持ち出した。
オコサマ・スター社のデータバンクには、膨大な裏金がある。
データバンクにハッキングしてくれれば金は取り放題、というわけだ。

ジョイスティックは金に困っており、借金地獄の上に、ガタがきている両目の電子アイを新品に買い換えたい。ゾニーのカラー・アイが欲しいのだ。

自分1人じゃ無理だが、デビルと呼ばれる侵入防御システムと闘いハッキングできる、エンジェルと通称呼ばれる天才ハッカーがもう1人いれば・・・・天才クラスのナイマと組めるなら、引き受けてもいいという。

ジミーとジョイスティックは、追跡を逃れながら、ナイマとの接触に成功する。
青い髪の若く美しいナイマは、この話にノった。
もちろん、大金は魅力的だし、ハッカーとしての腕も鳴る、
そして・・・ナイマは繰り返していたハッキングのせいで
古い記憶がない。ジミーに恋をした。それはきっと初恋だった。


ナイマによれば、デビルをかわしつつデータバンクにハッキングするには、ある特殊で強力なウィルスが必要だという。

かくして3人は、ボンベイ・シティへ・・・・。
リザの足跡を辿り、ソロの苦しみを終わらせるために。

ニルヴァーナの中では、終わらない日々が繰り返されていた。
人々は話し、食べ、セックスし、生活していたが、
ゲームのメインキャラの1人であるらしい高級娼婦マリアは、仮想現実の証拠を見せられても信じようとはしないのだった。
ますます孤独になるソロ・・・。

それぞれの魂に安息の日は訪れるのだろうか・・・・・。


ニルヴァーナ

ニルヴァーナ(’96伊/仏) (DVD)
ビデオだとココで1980円で買えます。

コメント用ライン



無国籍風(ややアジアンチック)な闇に包まれた近未来の都市は
もちろん、1982年の「ブレードランナー」 からの影響がうかがえ、あの湿った暗さが好きな方にはたまらない美意識。

美意識といえば、「ザ・セル」がお好きな方には、本作も「ザ・セル」ほど露骨ではないものの、やはりボッシュのシュールレアリズムの
影響が見てとれるので、あの色彩感、歪んだ宗教美が好みだと
いう方にもオススメ。

ハリウッドでは近未来ダークSFが1つのジャンルとして確立しはじめる中、イタリアで誕生したこのスゲー作品が、その後のSFジャンルにどれほど大きな影響を与えたか、計り知れない。

1999年は仮想現実SFラッシュ。
「イグジステンズ」では、体感ゲームの中に入り込み、仮想現実と現実の境目がわからなくなってしまう不気味さを描いたホラーSFを。
「13F」では仮想現実の果てが出てくる。ソロがクローゼットの中で見た“この世の果て”がこの映画にも視覚的に出てくる。
そして、「13F」では、仮想現実の人々の尊厳や人権についても
触れられる。
これと僅かな時間差で「マトリックス」公開。

樹木が枝分かれして広がっていくように膨らみ細分化してゆく
SFの世界観。今後がとても楽しみだ。

さて、ニルヴァーナとは、ジミーの創ったゲーム名だが、
仏教用語では、日本人には「涅槃」のイメージだ。
一切の迷いを離れた不生不滅の悟りの境地。

インド仏教のニルヴァーナ(梵語)は、“消してなくす、なくなる”こと。ここから転じて、煩悩の火が消え去る=悟り、ということか。

手塚治虫の「火の鳥」でも出てくるが、涅槃に達するまで、永劫に転生しつづける。涅槃に達すれば、死と転生のメビウスの輪から
解放されるのだ。

ジミーの創作したソロを主人公としたゲームの目的が何なのかは
よくわからないが、ゲームという「閉じた世界」であることには
なんであろうが変わりなく、だがそれは、マリアの言うとおり、
現実も「果てが果てしなく遠いゆえに境目が見えないだけの
仮想世界」ではないとどこで判断できるのか・・・という側面がある。

この物語の全編を包む、失われてしまったものへの慕情、切なさ。
理解しあえないまま死に別れた2人の愛する人。
思い出と、そうであってくれたらいいのに、という叶わぬ願望が
交錯する。
「メメント」のコメントでもかつて触れたのだが、
記憶というのは、そのひとがそのひとであるという最後の砦。
アイデンティティー。
でも、記憶は、本人にとっての真実でしかない。
愛されていたという記憶、後悔してくれているという記憶、
相手は愛していなかったかもしれないし、後悔などしていないかも
しれない・・・・。

人間の一生の記憶が入った小さな針のようなチップ。
でも、記憶は、モノになったとたんに、記録に変わる。

記憶を持たない哀しい女が、記録を得て、代用として愛される切なさ。

サイバーパンクの体裁をとりながら、この映画の描く愛の世界は
深淵で静謐だ。

ソロも、ジミーも、外側から閉じられることでしか、
最終的な安息は得られない。
でも、ついにソロもジミーも繰り返しのメビウスからおりることが
できたのだ。哀しいけれど、不幸ではないのだと思う。




・・・・ってけっこうシリアスなんですけど、
なにせ「オコサマ・スター」に「ゾニー」「ゼガ」(他にもいっぱい)ですからね。

どーも、監督が中近東を旅していたときに、日本製の中古の携帯ゲーム機で遊ぶ現地の子供らをみて、コレだ!となんか閃いたらしいんですわ。

個人的に、「瞑想の邪魔だぁ!」と銃を乱射する過激な修行中の方ですとか、「バットマン」の車みたいに、運転するとき以外は
みっちり防護壁で覆われているゴツいタクシーですとか、1日2回ピザを届けるマフィアですとか、治安が悪いとか言いながら、
長蛇の列の立ち食い屋でビールをおかわりしても殺されないですとか、細かいところにツっこみをいれまくって楽しませていただきましたw

電子目玉を取り替える手術のシーンは、グロかったですね。
にちょ〜んという感じが大変グロうございました・・・・。





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