2004年09月08日(水) |
「2300年未来への旅」 核に汚染された地球。外界を知らずドームで暮らす人々は30才で儀式と称して消滅させられる・・・。 |
2300年未来への旅【LOGAN'S RUN(ローガンの逃亡)】1976年・米 ★1976年 特別業績賞(視覚効果)
監督:マイケル・アンダーソン 原作:ウィリアム・F・ノーラン/ジョージ・クレイトン・ジョンソン 脚本:デヴィッド・ジーラグ・グッドマン 撮影:アーネスト・ラズロ 音楽:ジェリー・ゴールドスミス 出演:マイケル・ヨーク(サンドマン、ローガン) ジェニー・アガター(ジェシカ) リチャード・ジョーダン(サンドマン、フランシス) ピーター・ユスティノフ(老人) マイケル・アンダーソン・ジュニア(整形病院の医師) ファラ・フォーセット(整形病院の看護婦) ロスコー・リー・ブラウン(冷凍マシーン、ボックス)
西暦2274年、地球。 人類は地球を汚染しつくし、密閉したドームに住処を移してから もう長い年月が経過していた。 ドームからは外界はうかがいしれない。 土も、空も、太陽も知らない人類。
ここでは、人工授精によって受胎した胎児を、保育器の中で育て、 誕生するとコンピュータの管理下で育てられ教育される。
男女に「結婚」の概念はなく、共に暮らすこともない。 必要なときにデート回路でセックスの相手を探すだけだ。
人々は年齢によって、掌に埋め込まれた石の光の色と、着用する服の色が変わる。 子供は黄色、十代はピンク、二十代前半は緑、そして後半は赤。 そして、30才の誕生月になると、掌の赤い石が点滅する。
それは、「火の儀式」が近づいていることを示すのだ。 転生の儀式だと人々は信じ込まされている。生まれ変わりの儀式だと。 だが、一カ所に集められた30才の人々を、強力レーザーにより、 一瞬で骨も残さず焼き殺しているように見える・・・。
今日も儀式があった。 2274年山羊座生まれの30才、数十名が宙を舞いながら次々に 光線を浴び消えてゆく。 人々は熱狂的な祝賀ムードでそれを祝うのだった。
だが、当然システムに疑問を持ち管理社会に反旗を翻すものもいる。逃亡者(ランナー)を殺すのが、サンドマンと呼ばれる警察の中でもエリートの特殊隊員である。
サンドマンになる者は胎児の時点で決まっている。 完璧な洗脳を施され、マザーコンピュータの申し子となるのだ。
主人公、ローガンもサンドマンの1人。任務とあらば、愉しむかの如く逃亡者を追いつめ笑いながら殺害する。 その場で骨まで残らず一瞬で焼かれるので、このドームには「墓」 がない。そもそも、「死」という概念がないのだ。 体が消えても次の瞬間、転生すると思いこまされている。 計画的に誕生する赤ん坊の数と儀式で消える人数が釣り合っているため、ドーム内は常に人口密度が一定しているのだ。
だが、実際に転生の記憶を持つ人物に逢ったことのないローガンは、疑問を感じていた。
ある日、いつものように所持品検査とIDチェックを本部で受けると、先日の逃亡者から取り上げた十字型のアクセサリー(アンク)にマザーが反応する。 そして、ローガンだけに秘密の任務を与えるのだった。
サンドマンに処刑されなかった隠れ逃亡者が1500人を越しており、彼らは“サンクチュアリ”と呼ばれる聖地を目指しているらしい。逃亡者に扮し、ドームの外に出て、サンクチュアリの存在を確かめ破壊しろ。それがマザーの命令だった。
だが、まだ26才のローガンは掌の石が緑だ。まだ儀式を恐れ逃亡する年齢ではなくスパイだと疑われはしまいか、と任務を避けようとすると、マザーは彼の生命時計を4年進めてしまった! 赤が点滅している・・・!
進退窮まったローガン。マザーは、時計を戻すと約束はしてくれなかった・・・。つまり、何もしなくても消滅するわけだ。 不安を抱えながら、任務遂行のため地下組織に潜入しようとするローガン。
デート回路で知り合ったジェシカの胸元に、あのアンクを見つけ、 地下組織のメンバーだと確信したローガンは、掌を見せ、死にたくないから逃亡を助けてくれと迫るのだが・・・・・。
サンクチュアリと呼ばれる楽園は存在するのか? 秘密任務のため、親友のサンドマンに逃亡者として追われる身になったローガンの運命や如何に? そしてサンドマンを忌み嫌うジェシカとの恋の行方は。 ドームの外はいったいどうなっているのだろうか・・・・。
邦題がまるで『2001年宇宙の旅』のパロディなのは、 同じくMGMが手がけているからだろうか。単に便乗のような。 TVシリーズ(ローガンズ・ラン)でも人気を博していたようなので、ご存じの方も多いかもしれない。
未来、人類が世界を汚染したために、これ以上の汚染を避け、星の自浄機能が回復するのを数百年レベルで待とうとする管理社会。 人間が創ったはずのコンピュータプログラムに支配される恐怖。
管理社会、コンピュータとの闘い。手塚治虫の「火の鳥」しかり、竹宮恵子の「地球へ・・・」しかり、古今東西のSFで、映画、小説、アニメ、漫画など媒体は問わず、描き続けられてきたテーマだ。
30年、享楽的に暮らさせ、痛みなく消す。 いつか来る地球の土壌、空気の復活に向けて、とりあえず人類という生き物を絶滅させずに種を保存しているだけに見える。 あのドームは人類のためにあるのではない。 地球から危険な人類という種族を隔離するための檻だ。
ストーリーや細かい設定が破けたストッキングみたいでも全然気にならなかった。 なにしろDVDのメイキングを観て、当時の最先端の技術を駆使していることを誇らしげに語る製作者たちに、なんか目頭がアツくなってしまう。 今観て、チャチだ、安っぽいと嗤う人もいるだろうが、こういう 積み上げがあって、最近の、技術面に走りすぎて人間が薄っぺらいオシャレなSF映画が量産されていくのだ。
もともと未来は誰も知らない。はなっからリアリティもクソもない 世界なのだから、めいっぱい空想して、手持ちの技術でめいっぱい イメージの再現を追求したこの映画の製作者たちに拍手をおくりたい。
今観ると、愛すべきB級映画の要素がてんこもりで、たっぷり愉しませてもらえる。
☆ボックス最高。 ロボットよりも人間よりも優れていると自称なさる、アルミホイルをダンボールに貼り付けたようなロボ。腕は洗濯機のホースみたいだし、あれ転んだらどうやって起きあがるのかかなり謎な体型。 トドメに、激弱!
☆とっても意味なく脱いでくださるジェニー・アガターのおっぱいがマブしい。いっそ脱いだまま、毛皮をまとって乳まるだしで後半進めてほしかったw
☆なかなか退廃的でえっちくさい“ラブ・ショップ”の映像。
☆デート回路、出逢い系サイトよりさらに短絡的で便利そうw 女性に選ぶ権利はあるのか、あの構造。デートっていうより風俗店の顔見せみたくて笑えた。
☆風化したアメリカ国旗。猿の惑星とか、様々なSFで後々応用されてますな。 汚染されたのはアメリカだけでしょうかね? 案外、南の島では原始的に人間らしく暮らしていたりして。 それにしては、ドームに黒人が1人もいませんね? さすが70年代、と妙に納得。 生き残るのは優良民族の白人だけなんデスネ?
このあたり、2005年にリメイクされるブライアン・シンガー監督の「ローガンズ・ラン」ではどうなっているでしょう。きっと東洋人も黒人もいるに違いない。要チェック。 まさに映画は時代を映す鏡なのです。
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