股・戯れ言
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わしゃビリー・ミリガンではないが

若年性痴呆症の夫を介護する妻のドキュメンタリーを先日見た。
働き盛りのうちに症状が発生したため、稼ぎ頭を失った家庭において、夫の介護をし、さらに稼ぎにも出ているという奥さんの苦労は相当なものなんだろう。カメラに撮されていない部分や精神的な苦痛なんかは、想像を絶するレベルなのだろうと思われる。
だって、いくら介護しても、いくら働いて稼いでも、だんなさんはどんどん忘れていってしまう。支えられていることすら、忘れていってしまう。そして、奥さんのことすら、忘れていってしまうのだ。
まあ、そういう病気なんだからしょうがないのだろうけど、あまりにも切なすぎる。辛すぎる。
何度も心が折れそうになりながら、奥さんは日記にこう綴っていた。
「あなたは忘れてもいい。私が全部覚えておくから」

で、まあ、この言葉を目撃して、涙したんですけど。
あなたは忘れてしまう。忘れないでと願っても、全部忘れていってしまう。あなたがどんなに忘れたくないと願っても、記憶は自動的に消去されていってしまう。でも私が忘れないから。私がすべて覚えておきましょう。
もちろん、長い年月を共にしてきた夫婦ですから、いいことばかりあったわけではないと思う。美しい記憶だけじゃない。つらいことも、思い出したくないようなことも、何度もあったことだろう。
私のこのつらさも苦しみも、全部覚えておくから。あなたひとり、忘れてしまうなんて、そんなことは許さないからね。そのうえで、あなたをすべて受け入れましょう。

「私が全部覚えておくから」という言葉の中には、そういう意味もあるのだろうと思った。やや深読みかもしれないけど。




わしは自分が忘れないように、こうやってみっともない感情をすべて書いているわけだが、それは、「私は忘れていない」「私は覚えている」ということを言っておきたいから書いているのだと思った。

いや、前言はちょっと違うな。
私は今も苦しんでいて、そんな苦しんでいる私の存在を認めてあげたいからだ。くるしみは存在するのに、普段の生活していると苦しんでいない私しか必要とされないからね。でも、苦しんでいる私にも発言の場を与えてあげたかった。解放してあげたかった。
私は私を嫌うことをやめたのだ。私を受け入れていくことにしたんだから。
苦しんでいる私へ。あんたがヤツザキなのか、マサコなのか、どっちなのかはわからないけど、あんたもちゃんと私だ。
2008年10月20日(月)

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