Carol Propper, Simon Burgess and Katherine Green. 2004. Does competition between hospitals improve the quality of care? Hospital death rates and the NHS internal market. Journal of Public Economics, forthcoming. という論文を研究会で発表しました.イギリスの病院データを使って,競争圧力が医療の質にどう影響したか,というのを分析した論文で,医療の質の代理変数を競争圧力の代理変数に回帰して,符号がどおだったからどお,という論文です.タイトルから想像がつくように,競争が増えると質が低下するという相関関係を提示し,その原因を質を表すシグナルの弱さ・ノイズの多さに帰しています.へえ.なるほどねえ,とおもって感心して終わっていたのですが,どうもそうではないようで,やっぱり専門家は違うなあと思いました.どゆことかというと.この論文では医療の質を急性心筋梗塞(AMI)の30日後死亡率で取り,競争圧力を病院の通院可能圏内にある他の病院の数で図っています.結果がはっきりわかる(死亡)ので,急性心筋梗塞はこの手の実証によく使われる疾病で,日本でも行われているくらいです.さて,急性心筋梗塞の場合,発作がおきてから最寄の病院に運ばれることが多いらしいので,「病院を選ぶ」というのの分析にあんまり向いていないのではないか,ということらしいです.もちろん,病院を選ぶというのがないので,サンプルセレクションバイアスの問題は発生しないという利点はありますが,逆に,質との相関が検出されたからといって,競争圧力とそんなに直接に結び付けてもいいのか,ということです.ふむー.とおもっていたら,AMIの治療成績が評判(reputation)やランキングに影響しやすいから,やっぱり意味はあるんだ,という見方もあるんだそうです.ふむー.奥が深い.中途半端に首突っ込むもんじゃないですなあ.
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