所得税をかけると、みんな働く気がうせて働かなくなっちゃうのだろうか、という研究を進めているところなんですが、所得税の税率は働いた程度によって決まっちゃう(計量経済学の言葉では「内生である」)ので、統計的に調べるのは意外にかなり面倒です。なんにもしてないのに税率が変化しちゃう、ということが起きてくれると便利で、この理由によって税制改正といったイベントはこの種の研究の格好の種になるのですが、改正の対象になるひととならないひとはそもそも働く意欲が違うのじゃ、という可能性もあるので、これもそんなに簡単ではありません(DiDといわれる手法)。で、インフレによって名目所得が上昇するために税率が変化してしまう(ブラケットクリープ)という現象を利用したらいいのではないか、という論文がありました(Saez, Emmanuel. 2003. The effect of marginal tax rates on income: A panel study of ‘bracket creep’. Journal of Public Economics 87, 1231-1258.)。読んでみたんですけどうまくできてますなあ。結論はあんまり変わらんのですが。
|