ある大学院生の日記

2003年03月11日(火) Optimal Tax

留学先を確保した尊敬すべき後輩からいろいろと有益な話を聞かせていただき,こちらからはアホな話ばかり提供した後で,マクロワークショップにいって "Optimal Income Taxation and Human Capital"を聞きました.チェコ人でシカゴでPh.D.をとる予定の人らしいんですが,ちょこっとweb上でペーパーを見て「むむ.これは実証系の論文に違いないっ」と思って勇んで出かけたわりにえらく解析的な論文でびっくりしました.資本所得に対する最適課税についてはいろいろと研究が進んでいるのですが(ゼロ課税定理など),人的資本を考慮したものは少なくて,さらにprivate informationまで取り込んだものはないのだ,だそうです.最も簡単なケースでは,所得税は余暇に対する課税とみなすことができるので, ラムゼーの逆弾力性命題を応用した結論が出てくることになるのですが,彼の設定の場合,人的資本への投資そのものは効用関数に登場しないうえ,蓄積されたものへ課税されるので,個別物品税の特殊ケースとしては理解しにくい気がします.また,生産物は観察できるけどもタイプは判別できないという所得税特有のprivate informationの構造を入れて,incentive compatibilityの条件を課したりしているので,かなりワケワカラナさそうなんですが,どうもそれが結局のところかなりstaticなモデルに近い形で表されるんだそうです.あ.そうだったのかそりゃすごい(書きながら気付くな).

しかし,カリブレーションで出てきた効用関数だと労働供給の賃金弾力性がぜーったいでかすぎる,と思います.数値シミュレーションのオドロクべき結果もここらへんのパラメタ設定が大きく効いているはずなんですが.余暇選好の度合いが高すぎるということでもあります.どうなんだそこらへん.

夕方からかのチェコ人(てっきりロシア人かと思っていたのですが)とちょろっとお話をして,TくんとK田さんとご飯を食べに行きました.マクロらしいはなしになりました.ほほお.やっぱりasset pricing理論はいろいろと関係していて重要なんだそうです.そういえば,「技術進歩率の平均の低下(1次モーメント)ではなく,その分散の増加(2次モーメント)が起きた(主観的な増加でいい)ときに,家計の安全資産志向が強まり,株式よりも国債を持つようになった結果,株式市場の低迷と国債価格の上昇が起きている」というストーリーを思いついたんですが,これってどうなんでしょうか.家計にとってのリスクが大きくなればいいので,マクロの技術進歩率が一定で,家計の直面するリスクだけが大きくなるようなBewleyタイプのモデルでシミュレーションするとおもしろいかもしれませんが.なんちゅうことはないストーリーなんで「もうそんなの論文になってるよん」というのをご存じの方はぜひご一報ください.まだ思いついただけなんで.それともどこかで読んだストーリーがふっと浮上しただけかもしれないし(←この可能性は高い).


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