たまに××したり。
INDEXこれまで。それから。


2004年05月27日(木) 逃したサカナ?

その昔、ある男の子と映画を観に行くことになった。とあるイベントで一緒にスタッフをしていたのだが、何しろ無口で、黙々と作業をするのだが、時折何かブツブツとくだらないギャグを言ったり、おもしろいリアクションをしていたり、ちょっと風変わりな子だった。
そんな彼と映画を観に行く、と言うことになり、彼は東京、あたしは横浜の片田舎、待ち合わせは無理矢理横浜に設定し、話題の映画を観に行くことにした。
これがまたえらい混みようで、立ち見は免れない。
会場に入ると人でごった返し、仕方ない、立って観るか、と思っていたら、ぽつぽつと空いた席がある。

「うらら、ここに座れ」

彼はあたしをひとつだけ空いた席に座らせ、自分も遠く離れたやはりひとつだけ空いている席に座ってしまった。
満員の映画館で、ひとりで観る映画。しかもあたしはひとりで来た訳ではないのに、と、少し、おかしな気分ではあったが、映画を堪能し、お茶でも、と言うことになった。
近くの喫茶店に入り、映画の話をするでもなく、彼はいきなりトランプを取り出し、手品をはじめた。
正直、あたしの頭の中は「?」でいっぱいになった。
なんですか?この人は?
一応これはデートなんではないのか?

そんな彼とはそれっきりデートするでもなく、月日は過ぎ、音信普通になり、あたしは結婚し、ある日ふと観たテレビで彼を発見した。
あのころよりすっかり垢抜けて、カッコよくなった彼はプロのマジシャンになっていたのだ。

そして、夕べまた、ふと観たテレビに彼がいた。
鮮やかな手つきで、全く仕掛けが分からない手品。
アメリカでかなり活躍しているらしい。
娘があたしが彼のことを知っている、と聞いたら

「え〜ッ!ママ、すごいよ!ねえ、会えないの?会ってみたーい!」

とうるさいのなんの。
いや、もうムリっす。

でも、その昔、目の前で見た手品は、実はものすごく貴重な経験だったのね。
当時は「おかしなヤツ」としか思わなかったんだけどね。(笑)

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うらら |あばら家足跡恋文

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