たまに××したり。
INDEXこれまで。それから。


2004年03月18日(木) 卒園式。

ついにあたしの、可愛い可愛い目の中に入れたら痛いけど我慢できるであろうくらい可愛い息子が、幼稚園を卒園した。
思えば、娘の幼稚園選びの段階で、あたしの腹にいた息子はこの世に生を受けてから6年間、生まれてから全ての人生を幼稚園と共に過ごしてきたのであるから、その生活の一部とも言える園生活が終わるとなれば、感慨もひとしおなのである。

朝からあいにくの曇り空で、風も強く、午後からは雨も降るという天気予報に、ちょっとがっかりしながら、最後ぐらいのんびりと幼稚園に行こう、と息子と手をつないで歩いていく。

娘の時は通園バスがなかったし、出産前後はどうも運転が怖くなることもあって、産後しばらく車から遠ざかっていたこともあり、よほどのことがない限り歩いて登園していた。
雨の日も風の日も夏の暑い日にも、ひたすらふにゃふにゃの赤ん坊の息子を抱っこして幼稚園に通っていた。
3歳になると月に2回の幼児クラスに入り、一緒に手遊びしたり、幼稚園の雰囲気に慣らしていき、4歳で週に2日の幼児クラスに入り、初めてあたし抜きでの園生活が始まり、初めての登園日に、荷物を抱えて

「なんでゆう、一人でこんなに重いの持って行かなくちゃいけないの?」

と大泣きしたのだった。
それでも、始まってしまえば大しててこずらせることもなく、2年保育が始まるころにはバスに乗るのを嫌がることもなく、それなりに楽しく過ごした2年間だったようだ。

そんなことを思い出しながら、幼稚園に着くと、ものすごい人でごった返していた。
娘の時は1クラスで22人しかいなかった園児が、何が起こったのか、今年の卒園生は108人。両親揃っての出席も多く、時代は変わったな、と感心した。

会場に用意された座席は各家庭1つずつ。母親が座り、父親は壁際に立ち、ビデオ撮影の準備をする。
そこへ、先生からの注意の案内がある。

「まことに申し訳ありませんが、両側は通路として使用します。壁側にお立ちになられている父兄の方は申し訳ありませんが、廊下に出ていただきますようお願いいたします」

場内がざわめく。
廊下に出る、と言うことは我が子の晴れ姿をビデオに納めるのは非常に難しくなるということだ。

「ふざけんなよ!」

吐き捨てるように言う父親があり、

「冗談じゃないわよ!何考えてるの!」

ヒステリックに叫ぶ母親あり。

気持ちは分からなくない。
平日にわざわざ休みを取り式に参加したのに、邪魔だから外に出ろ、といわれたのではたまらない。
場内は騒然となり、式どころではなくなってしまった。

「本当に申し訳ありませんが、式の進行上どうしても通路としてあけていただきたいので、廊下に出ていただけるよう、お願いいたします」

司会の先生は本当に申し訳なさそうに、言うのだが、エキサイトした親たちは収拾がつかない。
そこへ、副園長と理事長が現れ、保護者を代表して何人かの父兄が話し合うことに
なった。
話し合っている間も、会場内は大変な騒ぎで、両者が譲らないものだから時間ばかりが過ぎていく。
あたしの頭の中に浮かんだのは教室で何が起きているのかも知らず、ただひたすら待たされている子どもたちのことだった。
なんで始まらないんだろう、と思っているに違いない。まさか、自分たちの親と幼稚園の先生とでこんな揉め事が起きているとは想像もつかないであろう。
式を円滑に行ないたい、と言う幼稚園側の意見もわかるし、せっかくの晴れ舞台を記念に撮影したい、と言う保護者側の気持ちも分かるが、何とかならないものだろうか、と途方にくれているところに、ひとりの母親が立ち上がった。
うちの子ども達と二人の子どもが同級生のヨーコママだった。

「皆さん、エキサイトする気持ちはわかります。でも、一番大切なのはなんでしょう?子ども達の気持ちを考えてみてください。子ども達には変更はきかないんです。今日のために一生懸命練習してきた子ども達は今、教室で待っているんですよ」

場内は静まり返り、興奮も少し収まった。

「誰?あの人?誰のお母さん?」

「すごいよね。そのとおりだよね」

彼女への賞賛がざわめきとなって場内を包んだ。
あたしは我がことのように誇らしく、素敵な友達を持ったなあと思っていた。
その間も園側と保護者間とでの話し合いは続き、何とか自分の子どものクラスの証書授与の間だけは撮影許可が与えられることになった。しばらくして拍手が沸き起こり、何とか丸く収まり、遅れていた式も始まった。

今年から、卒園証書を受け取った子ども達が感謝の気持ちをこめて、それを親に手渡しする、と言うスタイルに変わった。
堂々と証書を受け取り、親の元に来る子ども達ひとりひとりの誇らしげな姿に、胸が熱くなり、自分の番がやってくるころにはこらえ切れず涙ぐんだ。

「ありがとう」

緊張して、小さな声だったが、はっきりという息子の言葉に

「はい」

と返事をするのが精一杯で、息子の頭を撫でながら泣いた。

娘が通っていたころからいろいろとあった6年間だったけど、これで全てが終わった。そう思うと肩の荷が下りてほっとしたような、なんとも寂しいような気持ちで、幼稚園をあとにした。

「ゆう、もう、これで幼稚園おしまいなんだよ」

感傷に浸りながら息子に言うと、

「うん、それよりね、ママ、ゲームをクリアするのにあと16個風船集めなくちゃいけないんだよ」

息子には今夢中になっているゲームのほうが大切らしい。

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うらら |あばら家足跡恋文

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