日々雑感
DiaryINDEX|back|next
夜行バスで国境を越えた。ドイツからスイスを越えてイタリアまで。
午前0時発のバスに乗るべく遅い時間にターミナルへ向かうと、川のほうで花火の音がする。見ると、緑や赤の大きな花火が打ちあがっては消えてゆく。そういえば今日はワルプルギスの夜か。
ターミナルに並んで待っている人たちも、乗り込んだバスの運転手も、もうすでにイタリア語だ。おじさんは鼻歌をうたっている。トイレ休憩とみると「3分?5分?」などと口々に言いながら皆大急ぎで降りてゆく。この、ざわざわとした感じがなつかしい。ひっきりなしに喋る人たち。
うとうととして、ふと目が覚めると、バスは湖のそばを走っている。月夜だ。湖面に月明かりの影が浮かぶ。低いバスのエンジン音が響く。途中、国境検査員が乗り込んできてパスポートチェック(今回も日本のパスポートの威力を実感)。書類の不備なのか、五人ほどが荷物と共に降ろされ、彼らを置いたままバスは再び発車する。
次に目が覚めたときは山の中だった。急カーブがつづく道をバスはゆっくりと進む。夜の山は怖い。月に照らされてそびえ立つ高い峰の姿にくらべて、その懐をおずおずと進む自分たちの何という頼りなさ。深い谷間の底に、小さな村の灯りが固まっている。夢の中の風景のように、その灯りを眺めていた。それとも、あれはほんとうに夢だったか。
|