日々雑感
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友人は今日帰る。見送りがてら、いっしょに喫茶店へ。以前、東京に住んでいた彼女にとっての特別な場所だ。
繁華街のど真ん中、迷路のような裏道に、ひっそりとその店はある。古びた戸を開けて中に入ると、階段も床も黒光りのする木製で、歩くとギシギシと音がなる。曇りガラス越しに外の光は弱く、昼間でもぼんやりと薄暗い。大きなステレオからはクラシックが流れている。
何より、その空気だ。ここでは、時間は流れてゆかずに、ゆっくりと静かに降り積もってゆくみたいだ。かつて誰かが過ごした時間が層をなしている。そうした空気の底に沈みこんで、ピアノやオーケストラの音を聴いていると、この店にいると自分自身がチューニングされるような気がすると言っていた、その友人の言葉がほんとによくわかる。
その後、神保町などぶらぶらしてから東京駅へ。電車の中からは、神田川が見える。水面には川っぷちのビルの灯りがうつる。雨の東京。
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