■花 2■ - 2002年07月01日(月) 私は笑いを堪えるのに必死だった。 この奇妙な状態に。 駅前の通りの人々の全てに葉っぱが生えていた。 そして殆どの人に花が咲いている。 「耐えろ私。」 自分で自分に呟く。 色々な色の、色々な形の花達。 それは大きかったり小さかったり。 男女2人揃って同じ花が咲いていたり 又は違う花を咲かせていたり。 男同士でも同じ花が咲いていたりして。 不思議な世界に迷い込んだような そんな気分になってしまう。 キョロキョロと周りを見ている内に 花の名前が知りたくなって ついつい本屋に入って花辞典を夢中で探した。 どうせだったら 写真がデカデカと載っているのがいいと思った。 1600円も出して購入してしまった。 花言葉もついでに書いてある奴。 少し重いけど、コレが一番見やすかった。 手に持ちながら ふと。 後ろから微かに。 其れはホントに微妙だったのだけれど レモンのような香りがしたので 香りの方向を何気に振り返ってみた。 その方向には駅前で下を向いたまま 立ちつくしている男の人が居た。 途方に暮れたように そのまま階段に座り込み ドカリと足を投げ出して 小さくため息をついている。 短めに切ったその黒い髪の毛からは にょっきりと小さく黄色い花が 1本だけ生えていて ……そして 其れは落ちようとしていた。 何故か私は意味も無く走った。 彼の方向に。 何だか良く分からないけど 其れを落としちゃいけないと思った。 落ちるスピードと 私の走る速さ。 ……だめだ。 追いつけない。 ぽと。 落ちた小さくて黄色い花は サラサラと砂になって アルファルトに溶け込んでしまった。 「あぁっ!!」 私は泣きそうな声を出してしまう。 何故だか分からないけど酷く悲しかった。 どうして届かなかったんだろう。 胸が苦しくなるほど後悔した。 「何してるの?」 目の前の彼は不思議そうに 私を見つめていた。 私は悲しさのあまり大きな声で言った。 「だってアナタの頭の上の花! 今落ちて砂になってしまったんだよ?!」 「花?」 「あ…」 空気が固まる。 んでもってハタと気が付く。 「花」は多分私にしか見えないものなんだった。 変態に思われたかもしれない。 イヤそれどころか「病院行ったら」とか 言われるかもしれない。 …とにかく逃げた方かいいかも。 そう思ってくるりと背を向けようとした瞬間 「あ〜。花か。 案外そうかもしれないな……。」 と、彼がぼーっと言った。 あまりのぼんやりした返答に 拍子抜けした私は逃げようとした足を止めて 「なんでそう思うの?どう考えても 私の今の発言は変だと思わないの? イヤ思うでしょ。思うし!」 「何となく。今からメシ食べねえ?」 「……は?」 何だか妙に噛み合わないテンションと会話に 自分自身イライラしながらも このイライラは、もしかしたら 朝ご飯を食べてないせいかもとか あーパン食べてくれば良かったとか 色々頭の中で巡ってた。 「行こう?珈琲好き?」 彼は立ちあがってスタスタと歩き出し 後ろを振り返りながらそう私に言った。 「ミルクと砂糖無きゃ飲めない。」 「あったら飲めるな。パン好きか?」 「好き。」 実は自分は物凄い尻軽なんじゃなかろうか と思ったりもしたけど 彼は私の歩幅に合わせてくれるわけでもなく スタスタと先を歩いているので いつでも逃げられるという余裕があって 割と気楽だったし 自分自身が元々強引な人に弱いと言うか 振りまわされるのが割と好きだったりするので 何気に付いていく気になったのかもしれない。 其れに本気でパンは好きだったし ミルクと砂糖が入った激甘コーヒーも 想像してしまったらとても飲みたくなったのだ。 そんな事を考えながら 自分で言い訳がましいな、と最後に思った。 結局の所、興味があったわけで。 「その頭の花ってさ。」 「ん?」 彼がまた私を振りかえりながら聞いた。 「お前にも咲いてるの?」 「咲いてない。葉っぱならあるんだけど。」 「ふーん。」 彼は話しながらもスタスタと大股で歩く。 身長が私よりもはるかに高いから 途中、何度も何度も私が走る羽目になってしまう。 暫く黙って歩いた。 他に歩いてる人達の咲いている花を 見つめて本で調べながら。 ::::::::::::::::::::: 続き。 田口ランディ先生の「アンテナ」の 文庫版を購入したです。 ハードカバー持ってたけど 改稿版という事と 血のりがついた羽根の表紙に ついつい惹かれて買ってしまいました。 ワタシは割と小説に関しては 遅読なんですけど じっくり読みたいと思うです。 -
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