相方の腹が好きだ。 弾力、手触りともに申し分ない。 私は不眠症には無縁のどこでも寝られる奇跡の図太い神経を持っているが、不眠症の方でも、あの腹を枕にしたら羊なんか数える必要ないんじゃないかとすら思う。貸してあげないけど。 腹の出すぎたおっさんはどうかと思うが、腹に弾力のひとつもない、アスリートでもないのに腹に田の字ができるような男にも興味はまったくない。 相方の腹は、ストレスを霧散させる効果があると私は信じている。 その一方で、相方の存在自体がストレスの権化になることもままあるのだが、それはまた別の話なので今回は触れない。 私に腹をいじり倒されているときの相方の顔が好きだ。 本気でやめてくれと懇願する顔が好きだ。 足蹴にして鼻血を噴かせたいくらい好きだ。しないけどね。 ところがである。 相方が痩せてしまった。 昨年の健康診断で「メタボ予備軍」と判定され、フォローアップとして保健師の指導がついてしまったのだ。 おかげで相方は、昨年度比-5kgで今年の健診を迎えることになってしまった。 余計なことをするんじゃねー!(絶叫) 腹囲が問題だっただけで、血中コレステロール値も血糖値も血圧も問題ないじゃないか! 私の数少ない癒しを返せ。 私の唯一に近い癒しの手触りを返せ。 あの奇跡の腹を あのぷにぷにを 返せ。返せ。返せ。 と、盛り上がったのだが。 検診終わってほっとしたのか、また相方の腹がぽよぽよしはじめた。 よしよし。 あの腹は私のものだ。 何人たりともあの腹を貧相にさせることは、この私が許さない。
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