Opportunity knocks
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2002年01月17日(木) ノスタルジア

某Hさんのサイトに書かれてあったコーヒーの話を読んで、
高校生のときのことを少し思い出したので、少しそのときのことを
書いてみようと思う。

わたしはその当時(高校生の時)、今でもわりとそういう気があるが、あまり人と
話すことが好きじゃなくて、暇さえあると図書室で本を読んでいた。授業の合間や昼休みとか。
今思うと結構暗い青春時代だったな、と思う。
同級生が好きな男の子の話しに夢中になってるときに
ひたすら本のページをめくることに没頭していたのだから。

私の学校の図書室は、校舎から少し離れたところにある独立した建物の中にあった。杉の木がぐるっとまわりを囲んでて、なかなか雰囲気の良いところだったのを覚えている。
その図書室の隣には司書室があって、古文の先生が司書をかねていた。
青山先生という男の先生(その当時かなり年はいってたと思うが年齢不詳)で、授業がないときは、職員室ではなくいつもその司書室にいた。

青山先生は、何ていうか、普通の先生とは全然違っていた。
おしつけがましいところが全くなくて、いつも落ち着いてて、すごく穏やかな先生だった。何もいわなくても不思議に生徒の気持がわかってしまうような先生で、誰も先生のことを悪くいう人はいなかったし、誰からも自然に慕われてしまう、そんな先生だった。
わたしは完璧な文系人間で、数学や物理などはしょっちゅう赤点すれすれの点数をとっていたが、現国や古文、世界史なんかは結構熱心に勉強していたし成績も良い方だった。
テストの前なんかはよく司書室へ行って勉強を教えてもらったりしていたのだけど、そのうち好きな作家の話や、学校のこと、これから先の進路についてもよく話をするようになった。2、3年生になると、図書館の本を持ちこんでよく司書室で本を読んだりするようになった。特に雪の降る季節は、図書室よりも暖かい司書室で本を読むことが多かった。

で、コーヒーの話。
青山先生はコーヒーが好きな人だった。司書室にはたくさんの本の中に混じって、常にコーヒー豆とミルと飲みかけのコーヒーカップが置かれていた。
時々、「おいN、豆ひいてくれ」と、よくコーヒー豆をひかされた。
先生のまえでは、えー、また?なんてイヤそうな顔をしたりしたが、実は、がりごりと豆をひく音と感触、本の匂いにコーヒーの匂いがまじりあっていくその感じがすごく好きだった。今でも本を読みながらコーヒーを飲むと、そのときのことを思い出す。ろくでもない高校生活の中で、唯一まともな思い出。


Hさんの文章を読みながら、ぼんやりとそのときのことを考えた。
ストーブの上で音をたててる薬缶。窓の外の杉の木に、音もなく降り積もっている雪。コーヒーカップの温もり。あかい頬した高校生の私。
何となくそんな光景がアタマに浮かんだ。
何であんなに本ばかり読んでたんだろう? ほんとに。

高校生だったときの自分からだいぶ遠く離れてしまったような気がするのだけど、
高校生のときのそのあたたかい記憶が、今も私のすぐそばにあるということがわかって少しほっとする。

ノスタルジックにひたった夜、だった。





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