TOI,TOI,TOI!


2006年11月24日(金) 灰谷健次郎


灰谷健次郎が死んでしまった。
まだ言葉にしてもちょっと現実味がない。
でも事実。

18の時、家出同然で台湾に旅立った時。

スーツケースと楽器、と自分、自分の一番大事なもの、と自分。ものすごい孤独感。あのときの気持ちは「引越」などというものとは程遠いものだった。

そのスーツケースの中には灰谷健次郎の本があった。
持ってたの全部。10冊ぐらいあっただろうか。

住むことになった部屋は、本棚なんてない、ベットしかないすごく小さなぼろい部屋。その部屋に着き、自分で本を立てるための支えを工作した。ティッシュの箱だったか靴の箱だったか。

灰谷健次郎の本の背表紙が並んで、牢屋のような部屋が自分の部屋になった。


5年前、ここドイツに向けて旅立ったときも、
やっぱり灰谷健次郎の本と一緒だった。フランクフルトでは最初の頃よく引越をしたけどハードカバーの「天の瞳」の背表紙が並ぶと、落ち着いた。

ホームシックらしいホームシックもなかった私だけど、灰谷健次郎を読み返しおなじみの人物達に会うと落ち着いた。
そんなにしょっちゅう読むわけじゃないんだけど。


子供の時から公民館の図書館でよく灰谷健次郎の本を借りてきて片っ端から読んだ。子供向けのものは全部読んだと思う。
もともとのきっかけは母親だった。思春期になって反抗期になって親の全てを否定していた頃も灰谷健次郎だけはやめなかった。


ここフライブルクには・・・
灰谷健次郎の本を持ってこようと思わなかった。台湾にいくときとかドイツに来た時とは心境が違っていた。のだろうか。
持ってきた本はドイツ語の本と数冊のヘッセやツヴァイクの本。まだ一度も読んでない本を移動中に読もうと思い、繰り返し読んだ灰谷健次郎やほかの本はダンボールに詰めてフランクフルトの部屋の物置に置いてきた。
たった6ヶ月だしと。その間に訃報を聞くことになった。


  
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