TOI,TOI,TOI!


2005年10月23日(日) 冒険

BadHomburgで室内楽の講習会にピアノトリオでさんかしてました。昨日、修了コンサート。

おとといのこと。
朝オペラでリハーサル、夜、オペラの公演があり、昼、BadHomburgでレッスンだった。

レッスンが終わってSバーン(電車)でフランクフルトに向かう途中、電車が突然徐行運転に。
車内アナウンスで
「信号で徐行運転と出てるので。今のところ7分の遅れ」
なんて言ってて、ま、今日本番7時だし(その時5時ぐらいでしたね)そん位の遅れなら余裕余裕と思って、車内で3人で馬鹿話に花を咲かせていた。すごい霧だったので、そのせいかなと思ってた。

ふと時計を見ると、もう30分近くのろのろ走っているのにまだ全然Badhomburgの近くだということに気付き、そうこうしているうち、とある駅で停車。

「次いつ発車できるか分からない」とのアナウンス。

その駅のひとつ前の駅はOberurselといって地下鉄に乗り換えることができる駅で、あのときこうなることを予測できて、さっと乗り換えていれば!後悔先に立たず。

それでも電車の中に残っている人はけっこういて、私達もどうすべきか、この電車はいつか走りだすのか、と話したいたところ、ものすごい霧の中、視界の隅でバスがブロロロ・・。

慌てて電車を降りてバス停に向かった私達が見たものは、今行ったバスがOberursel行きで、1時間2本しか走ってないという事実。後悔先に立たず。ちきしょー。

不幸中の幸いは、黒衣装を一式オペラのロッカーに入れてあったこと。後悔その3は黒靴だけは家にしかないこと。黒靴はいて自転車で通勤するのが習慣になってきていたので。
この日は1日中黒靴を履いてあちこち移動する気がしなかったので、一度家に帰って靴履き替えて、いつものようにチャリ通の予定だった。

駅の大きな時計が6時にどんどん近づいていたので、まず靴をあきらめた。
ピアニストに、「伸はそろそろあちこちに電話入れといた方がいい」と言われ、まずは代わりに弾いてもらう人を探そうとして、もう一人のトラの子に電話して、興奮状態で状況を伝えた。
「今実家のバイロイトにいて今日は弾けないけど、その場合やむをえない事情だから、さっさと事務局に電話して事情を伝えるだけでいいのよ」
と言われ、ああそういうものかと、だいぶ落ち着き、そのようにした。

電車は相変わらず止まっていた。バス停には電車を下車する人が続々と増えていき、50人ぐらいになっていた。その人たちの話で、車内アナウンスで「人身事故」と知らされたことが分かった。

私がおろおろとあちこちに電話をしている間、チェリスト氏は、そこらじゅうの車に乗っている人に「この子が7時にオペラで弾かなくちゃなんないから、乗っけてもらえませんか。フランクフルト方面に行きませんか」とやってくれていた。
車で待機してる人はこの田舎駅まで誰かを迎えに来た人ばかりで、皆答えはノーだった。

タクシーを呼ぶにも番号が分からなかった。この辺に住んでいてこの辺のタクシー番号を知っている人はだれもいなかった。タクシーをどっかから呼んだ人は「来るまでに20分かかる」と言われたそうで、じゃ、もうすぐ来るバスに乗るのとどっちが早いんだーなんて言ってるうちに、タクシーが2台とバスが同時に来た。ここで頼もしかったのはピアニスト氏。

「おまえらはバスの入り口を押さまえとけ。」

といって彼はタクシーの方に全速力で走っていき「7時にオペラで弾かなくちゃいけない人がいるから、どうか乗せてくれ!」と、大声で掛け合ってくれ、フランクフルト方面に走ることも分かり、50人ぐらいの視線を感じつつ、相乗りさせてもらったのだった。チェリスト氏はタクシーに向かった私と一緒にうっかりバスから離れてしまい、バスは一度は走り出してしまったのだが、それをまたピアニスト氏は必死に手を振って強引に停めて、二人で乗ってった。

タクシーの運ちゃんが劇場の場所を知らなくて「Alte Oper」(コンサートホールがこういう変な名前)のことだと思ってたんで、それに気付いてからはカーナビで走り出し、おかげで、あの、なんであのカーナビってのはくるくる遠回りするんでしょうかね。まったく。着いたのはなんと、開演1分前。
ダッシュでロッカーに向かい、スピーカーから聞こえる調弦の音を聞きながらマッハで着替え。服を脱ぎ散らかし、ロッカーも開けっ放しのまま、ピットへダッシュ!
扉を開けると、「あとは指揮者を待つだけ」の静寂の時間だった。オケ全員の視線を感じつつ、着席。

後から知ったことだが、遅刻は50ユーロの罰金。でも電車が理由の場合は免除。車の渋滞の場合は免除にならないらしい。電車は自己責任ではなく、車の場合は自己責任。電車の定期はオケから出る。車のガソリン代は自腹。ま、車もってないし免許もないし、遅刻しないで間に合ったんだからいいんだけどね。


  
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