TOI,TOI,TOI!
「電話なってるよ」
友達に言われて初めて気がついた。 周りがうるさい&おしゃべりに夢中だった。
マライケ「やっと出た。いったいどこにいるの」 伸「友達と4人で食事中」 マ「家にも携帯にも何回も何回もかけた」 伸「ごめん。なに?」 マ「楽しく食事してるの?」 伸「いいから。なに?」 マ「あとで、またかける」
でも、またすぐにかかってきた。
伸「もうすぐ家に帰るから、こっちからかけるよ」 マ「ノブコ!」 伸「なに?泣いてるの?どうしたの?」 マ「バーバラがバイオリンやめる!」 伸「・・・え?」 マ「バーバラが学校もバイオリンもやめちゃうの!!」
慌てて店の外に出た。
伸「まじで?本当に明日から学校来ないってこと?」 マ「前からずっと考えてたけど、とうとう決めたみたい。今日先生に言ったって。ってことは、決心して行動したってことだと思う」 伸「バーバラ、ずっと言ってたけど、本気で考えてたんだ」
いろんなことに興味があり、音楽だけの生活なんて物足りない、私には無理、と日頃からよく言っていたバーバラ。心理学に特に興味があるみたいなので、これからはそれを勉強できる環境を探すそうだ。
伸「だいじょぶ?」 マ「ただ無性に悲しい」
『マライケ。私が出たあとに、ここに住めるよ。』 と、バーバラから電話があったという。バーバラも少し泣いていて、マライケはぼろぼろに泣いたらしい。 マライケとバーバラは入学当初、いつも一緒にいた。授業も『全部マライケと一緒のを取る』とか言って本当にそうしたらしい。 マライケは、音楽大学に通えることを毎日喜びながら過ごしてる、みたいな子だ。 そんなマライケと私は、すごく気があった。そのうちいつも一緒にいるようになった。「バーバラとユーディトはいつも男のタイプ話とか、どうでもいい話ばかりしてる。いつも話題が同じで面白くない。」と、よく言っていた。
マ「初めの頃の大事な時間をすべてバーバラと一緒に過ごしたから、彼女がいなかったら、いろんなことが全然違っていたかもしれない。当時は興味深い話もたくさんしたし、話しててけんかになりそうだったこともあった。でもしょっちゅう大人数で集まってパーティするのが好きなバーバラのおかげで、うちの学年はみんなすぐに仲良くなったし、すごく楽しかった。今、そのバーバラがここからいなくなるというのは、なんだかとても悲しい。
とにかく、今日で部屋探しから開放されたの。なんだか。でも、ついに。やっとフランクフルトに住める。」
うちからバーバラのアパートまでは歩いて5分。数週間後に、マライケも学校まで歩いて通える環境になる。
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