TOI,TOI,TOI!


2002年02月15日(金) カッセル、そして・・・

「良いことは(悪いことは)重なる」

「悪いことがあったら、そのあとに良いことがある」

誰もが一度は、口にしたり誰かに言われたりしてると思う。
言ってもらうことの方が多いな、私は。

「何で私だけ?私って運がない?私だけ苦労してない?」
恥ずかしながら、私はこういうマイナス思考によくはまってしまう。
テンションが高く、騒ぎまくっている時の方が多いが、実は、こういうネガティブ方向にズドーンと落ちるときがある。
愚痴る私に、いったい何人の友人が上に書いたようなことを言ってくれたことだろう。
ありがたいことを言ってくれてるのに、それを私は素直に聞けていただろうか?と振り返りたくなるようなことが、このところ続いた。
人生、本当にそうなってるんだぁ・・・と、今日は実感している私である。


カッセルの本番前日のこと。
「本番だと思って、全部通して弾いてみなさい」
と先生に言われた私は、レッスン室で明日弾く曲を全部、
先生と、Kとハラトモさんの前で弾いた。
       
       

  音程がめちゃくちゃになった。
  弓をコントロールできなかった。


だんだん調子が出てきて良くなってきたけど、最初がだめ。
いつもそう。

弾き終わると、先生は「GUT」と言ってくれた。
でも、私は笑顔で応じる余裕すらなかった。
全然GUTではなかった。

このクラスにいる誰もが皆、弾き方を変えている途中なのだ。
右手のテクニック。ボーイングのスタイルを。
前回のフォアシュピールでは、一発目の和音が不時着して墜落死してしまった。手首の支えが足りなかった。
そのスタイルとは、簡単に言うなら、
『ひじで弾く』
ひじから音を出すような感覚。ひじを重くして、その重さを手首が支え、指で表情をつける。言葉にするとこんな感じ。
弾いてるうちにだんだんレッスン時の感覚を思い出すんだけど、
慣れてきて感覚を思い出すまでの間が、ぎこちな〜くなっちゃう。


テンションの低い私に、先生は、めいっぱいテンションをあげて、
「この曲は、キミだ!これは伸子だ!これはキミ!これはキミだ!」
と言ってくれた。

モーツァルトのコンツェルトG-Dur。
「この曲の性格は、伸子みたいだ。いつも笑っていて、いつも冗談交じりで」
と、レッスンのときに言われことがあったが、今日も、Kたちの前でまた言ってくれた。K大ウケ。

モーツァルトのコンツェルトは、どこのオケのProbespiel(オーディション)の課題にも絶対に入っている。
G-durは点が取りにくいと言われてるらしくて、選ぶ人はとても少ない、そうだ。
だいたい、D-durか、A-dur。この2曲と一緒に並ぶとG-durは映えない、らしい。
そうかなぁ。
私は今のところ、G-durが一番好きだ。

帰るとき、先生は私の肩を抱き、力を授けてくれるような感じで、
「toi,toi,toi!」
とやってくれた。

「1週間延びて、集中力を持続するのに疲れたんじゃない?」
とK。どうやらそのようです。
「今日はもう弾かないで、ウチ来てご飯作ってよ(K)」
これは、ありがたかった。やることがあった方が気が晴れる。

帰りに挽肉を買って、K邸へ。
しょうが、にんにく、ねぎをみじん切り・・・サクサク。
「指だけは切らないよ−に(K)」
Kが指定したメニューは麻婆豆腐。
「前日上手くいき過ぎないほうがいいって。そのほうが本番上手くいくよ」
とKは言ってくれた。
「今日はビールでも飲んで、さっさと寝なさい」
と言って、帰りにKは缶ビールを1本くれた。
「名付けて、がんばれ応援ビア」とか言って。

翌日、早起きして少し音出しし、ICEでカッセルへ。
隣の席でおばちゃんがず〜っと話し掛けてきていた。
休みたいよ〜と思ったけど、まあ、私も結構楽しくおしゃべりしてたし、今考えるとよかったのかも知れない。おかげで余計な緊張もせず、変な気負いもなくごく普通にカッセル入り。

続きは明日の日記で。


  
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