skajaの日記
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2006年11月22日(水) 『わたしを離さないで』

通勤の時に読もうと思って買ったのに、3日で読み終わってしまいました。残念。
でもそれくらい面白かったです。
「臓器移植用に作られたクローン人間」という重いテーマが下敷きになっています。
その設定自体がけっこうホラーなんだけど、自分たちがそうであることは子ども時代から薄々気付いていて、やがて受入れていく(ただし、数年間の「猶予」という希望は捨てない)という彼らの態度がね、薄ら寒くて恐ろしかったです。
抵抗したり反乱をおこしたりしないの。まさに家畜同様の存在なのです。
物語は「ヘールシャム」という、家畜同様どころか人間以上のレベルの教育を受けてられる特殊な施設で育った女性の語りで進みます。
寄宿舎学校のような子ども時代。でも時々感じるちょっと普通じゃない学校の雰囲気。少しずつ明らかになる彼らの存在の秘密。
時々、ふいにさらっと「提供」の話題が出てきてもそれについて主人公が深く悩まず、さらっと話が進んでいくんです。謎解きミステリー小説じゃなかったね。
中盤はけっこう青春小説です。
私はやっぱり女性的な駆け引き、虚勢と維持の張り合いと仲直りと秘密の打ち明け話とは縁遠い青春時代を過ごしたようで、普通皆が感じていることなのか、クローン人間だから生じる特殊な感情なのか判別がつかず、「思春期の女性の気持ちを見事に描いている」かどうかはあんまりわかりませんでした。

草原で佇みながら親しい人を思い浮かべ少しだけ泣く、たったそれだけのことなのに「自分に許した唯一の甘え」と言うキャシー。あのあっけなく淡白な終わり方が印象的でした。
私はそんな彼女に親しみを覚え、彼女のことが好きだなと思いました。


skaja

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