文ツヅリ | ||
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2004年06月13日(日) ★[ 01.はじまりは ] |
はじまり……は、なんとも思っていやせんでした。 寧ろいつも近藤さんの隣にいて正直ウザイかなあって。 いつ寝首を掻こうかってしばらく考えてた時もありやしたねェ。 ……勿論、冗談ですぜ? でも今思えばそのあたりから気にしてはいたんでさァ。 良くも悪くも。 いつからだったか、近藤さん以外に土方さんにも目が行くようになっていやしたね。 当時は殺意故だと思ってたんですけどねェ。 あ、冗談でした。 ま、そんなわけで暇さえあればずっと観察したりしてやした。 ……いえ、仕事もしてやしたよ。 たまに。 したら土方さんがしょっちゅう吸ってる煙草。 あれがどうも気になりだして。 こっそり土方さんのをくすねてきやして、吸うことにしたんでさァ。 いや、ほんと若かったなァ。 で、煙草を手に持って火をつけようとしたんですが、なかなか火がつかない。 先が黒くなるだけで、全く。 何度も、何度も同じように繰り返して、でもやっぱりつかなくて。 土方さんはあんなに簡単そうにつけていたのに、なんで俺じゃ駄目なのかって思いやしたね。 そこにやってきたのが土方さんだったわけでさァ。 突然背後から手が伸びてきて、こう抱え込むように俺の右手を引き寄せて。 それで煙草をくわえて火を付けてくれやした。 きっかけなんて単純なもんでさァ。 毛穴すら見えるほど近くにいる土方さんの横顔とか染み付いた煙草の匂い、掴まれた手のあったかさだの、そういう些細なこと全部にどきどきしやした。 そんで煙草を少し吸った俺に言ったんでさ。 「うまいか?」ってね。 言いながら、……土方さんが、笑ってたんでさァ。 その頃全く懐きもしなかった俺が、土方さんの好物に興味をもったことが嬉しかったのかな。 だからつい、煙に咽そうになるの我慢して頷いちやいやした。 全然うまくなんてありやせんでしたけどね。 いやー可愛かったなァ、あの時の土方さん。 まァそれ以来、笑ってる土方さんなんて見なくなりやしたけどね。 ……え? 俺の態度のせい? やだなァ、そんなわけないでさァ。 とにかくそれが意識しだした、まあ“ハジマリ”ですね。 まだ土方さんがポニーテールだった頃の話でさァ。 えーそれから紆余曲折があって、現在に至りやす。 さ、約束でさ。 全部話したんだから今までのサボリ分チャラにしてくだせェ。 ……端折るな、って言われても、これ以上は特別手当出してもらいやすぜ? ……はいよ、もうサボりやせんて。 そうそう、今の土方さんにはナイショにしといてくだせェよ。 あ、それと。 絶対邪魔しないで下せェよ、近藤さん? |
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