以前『懸賞日記』の方に書いた劇場招待券の当たったお芝居、演劇企画集団THE・ガジラの7月公演『アンコントロール』を会社帰りの旦那と一緒に観に出かけた。場所は下北沢のザ・スズナリ。とても有名な劇場だけれども私はこれが初めてだった。収容150人ほどの小さな劇場、この空間で4人の役者さんによる気力のぶつかり合いのお芝居を堪能した。ストーリー: 死者数百名を出す大惨事となった航空機墜落事故から5年。妊娠中の妻の体調不良による直前のキャンセルで事故を免れた芹澤夫妻は、自分達が助かったことと引き換えに死んでしまった人がいることへの罪悪感を抱えていた。事故後生まれた子どもの成長が止まったままだということも大きな陰を落としていた。そんな時に出会ったのがその墜落事故で夫を失った高村泰子。彼女もまた「自分のせいで夫が死んでしまった」と心の葛藤を続けていた。そして彼女の登場が芹澤夫妻の生活の歯車を狂わせていく・・・。出演: 南果歩,七瀬なつみ,大鷹明良,久保酎吉 作・演出/鐘下辰男1985年8月12日、暑い夏の夕刻に発生した死者520名生存者4名という大惨事となった日航ジャンボ機墜落事故をモチーフとして作られた心理劇。タイトルの「アンコントロール」(操縦不能)は回収されたボイスレコーダーに残っていた機長の言葉でもあり、劇中での自分ではどうにも出来ない心の葛藤を意味している言葉でもあると思う。お芝居の始まりは高村泰子(果歩さん)のひとり芝居。「治療に通っているカウンセラーに勧められ私は私の物語を書く。その舞台はとある新興住宅地の若葉台マンション・・・」と言った感じで始まるので、観客は泰子の作り出した物語を観ているのだと思う。でも芹澤明生(久保さん)・真奈美(七瀬さん)夫妻、そして明生の仕事仲間である青砥(大鷹さん)が加わりお話が進むと、これが現実世界を描いているのが、それともあくまでも泰子の作り話なのかわからなくなってしまった。はっきりいってどっちでもいいほどに白熱した舞台だったけれども。上演時間2時間15分。時には静かにそして時には互いを罵倒しあう心のぶつかり合いのお芝居だった。夫婦のこと、子どものこと、そして自分でもどうにもならない心の動き・・・。人間の持っているもろい心や醜い心を見せつけられて重い内容だった。この劇を3週間上演する役者さんにも相当の気力が必要だと思うけれど、観る側もかなり疲れてしまうかもしれない。もちろんそれは嫌なものではなく、心にどすんと入ってくる疲れ。果歩さんは「狂気になったらこんなだろうな」というのが想像出来、その通りだったのだが(もちろんそれはそれで鳥肌立ちそうな狂気だったのだけれど)、七瀬さんのこういう役柄を見たのは初めてだったので、そのブチ切れ演技には圧倒させられた。本当に「役者さんってすごい職業だな」とあたらめて思い知らされたすごい舞台。ただで見てしまって申し訳ない気がするくらいだ。 −−−過去の今日のこと−−− 2002年07月23日(火) 暑すぎる・・・