わたしはよっちゃんよりもとおくへきたとおもう
ただしくんよりもとおくへきたとおもう
ごろーよりもおかあさんよりもとおくへきたとおもう
もしかするとおとうさんよりもひいおじいちゃんよりも
ごろーはいつかすいようびにいえをでていって
にちようびのよるおそくかえってきた
やせこけてどろだらけで
いつまでもぴちゃぴちゃみずをのんでいた
ごろーがどこへいっていたのかだれにもわからない
このままずうっとあるいていくとどこにでるのだろう
しらないうちにわたしはおばあさんになるのかしら
きょうのこともわすれてしまっておちゃをのんでいるのかしら
ここよりももっととおいところで
そのときひとりでいいからすきなひとがいるといいな
そのひとはもうしんでてもいいから
どうしてもわすれられないおもいでがあるといいな
どこからかうみのにおいがしてくる
でもわたしはうみよりももっととおくにいける
『とおく』谷川俊太郎
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