黒スズメバチのある行動だ。この蜂は巣づくりが苦手である。そこで別種の黄色スズメバチが巣を作りはじめのころ、その巣の女王蜂を殺して巣をのっとってしまう。そのときのっとられた巣の幼虫や卵は殺さない。 やがて幼虫が働き蜂に成長する。するとまずする行動は女王蜂の匂いをかぐのだ。そしてその匂いを仲間の匂いと認識をする。つまり女王が本当の親でなくてもこの蜂にとっては女王蜂なのだ。生まれてきた働き蜂として何ら変わらない一生を送るのだ。 やがて巣が大きくなっていく。働き蜂としての寿命はおよそ二ヶ月。そのため最後の卵が孵ってから二ヶ月ほどで元は黄色スズメバチの巣が黒スズメバチの巣になってしまう。 問いかけよう。この働き蜂たちは不幸と呼べるのだろうか。 本当の親の敵に慕い、尽くし、やがては死んでいく。滑稽であり、おろかだが、蜂たちはむしろ幸せであろう。考えてみてくれ。働き蜂はどうあがいても女王蜂にはなれない。結局は女王が変わっただけで同じような一生だからだろう。しかし、中には不幸だと思う人もいるだろう。それは蜂を擬人化して考えていないだろうか。人には想いがあり心がある。そして多かれ少なかれ自分の人生を選んでいるからだろう。 さて、あなたは今の生活に満足しているのか?満足をしているのなら蜂と一緒だ。不幸ではないが真実を知らないだけなのだから。真実を知って不幸になるか、それとも知らぬままに幸せに生きることを望むかは自由だ。でも、この話を読んだ時点で「今」に疑問をもってしまっただろう。だから君は蜂のような幸せは持つことはできないのだが。
|