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アメリ(ジャン=ピエール・ジュネ)
ヒネクレ者なので今ごろやっと観た。それも「アザーズ」が映画サービスデーで満員だったので「じゃあどうしようかなあ」と思って歩いてたら新宿文化の大きいほう(シネマ1)でやっていたので。 ● これはひとことで言えば、史上最強の「不思議ちゃん」礼讃映画である。まあ、最終的には「書を捨てよ、町へ出よう」というメッセージが示されはするのだが、要は「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」と同じことで、悔い改める前のほうがずっと面白いのだ。不思議ちゃん=アメリのデンパな妄想は「乙女チックな夢」として、ストーカーまがいの犯罪行為は「オチャメな悪戯」として描かれるので、女性観客全員が「んもぅ、アメリったら可愛いんだからっ!」と勘違いしてしまう仕組みになっている。きっと「あゝ、あたしの不思議ちゃん人生は間違ってなかったんだ」(註:ここで彼女の脳内では天から光が差す)とか思っちゃうに違いないのだ。こんな映画が大ヒットしちゃって世の中にアメリ女が増殖したらどーすんのよ。てゆーか、すでにホラ、あなたの後ろにもアメリ女が物陰から様子を窺ってませんか? ● アメリ役のオドレイ・トトゥが唯一無二のハマリ役だということに異論はない。チャーミングだとも思う(カノジョにしたくはないが) しかし最初はエミリー・ワトソンの予定だったってのは悪い冗談じゃないの? 怖すぎるでしょそれは。 ● 「エイリアン4」以来、3年ぶりの監督作となるジャン=ピエール・ジュネは──かつての相棒マルク・キャロが参加した「ヴィドック」のように、あるいは同じくモンマルトルを舞台とする「ムーラン・ルージュ」のように──画面に写るものを100%人工的にコントロールする。全体を古い絵ハガキのような風合いに染め上げて、自然の風景はひとつも残さない。果ては地下鉄構内の看板まで描き換える凝り性には感心した。
m @ s t e r v i s i o n