そういえばコケシ話をするんでした。
アレは…姉がいつものように12時を回った頃 ガチャリ、とカギをあけるのを いつものように内側から眺めていた夜でした。(開けてあげなよ)
「…おかえり」 「…ただいま…」
昼間に録ったアニメを観おわって 寝ようかと思ったそのとき。
「あ、髪の毛切ってあげるよ」
恐れていた事が現実になる時がやってきたのです。
ビデオや番組の編集の仕事をする姉は とある美容室のカット講習ビデオを担当し そこなカット技術をこれ適当や如何やと確かめるべく、 彼が妹をモルモットと書いて実験体とせんとて 前々より 君が髪を切らん と 心あつくして候。
とはいえ、「あんたに似合いそうな髪形が…」 という、そのたった一言に 少しばかりの期待を抱いた… 私が愚かでありました。
ビニールゴミ袋を貫頭衣に仕立て キッチンにて暑苦しい時間を過ごす事一時間ほどでしょうか。 後ろ、左脇を順調に終り、右のカットにいそしむ姉に 「…左を見ながら切らなくていいの?」と おそるおそる訊ねますと 「…あっ…」 「……。」 時 既に遅く。
うなだれ、笑いを堪えつつ 左脇に再びはさみを入れ始める彼女には もはや集中力もなく、 「仕上げより顧客サービスで勝負」などと見当はずれを口走り サウナ貫頭衣に息を吹き込んだり
前髪が一部不思議なほど短かったり
全てに絶望を見た私は やさぐれモード ターン オン。
鏡の中には デビュー当時の広○リョウコさんの頭をした 半べそやさぐれ私が。 さようなら、山姥ヘアー。 こんにちは、コケシヘアー。
二、三日たった今では シャンプー消費量の少なさに喜んだり、 体重が500gほど減ったのに喜んだり、 自分の慰め方を学びおおせたのであります。

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