原案帳#20(since 1973-) by会津里花
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2002年10月16日(水) ……

男が言うのよ。
「しばらくおまえのところに住まわせてもらえんか」って。

今の私にそんなこと、してあげられるわけがないじゃない。
弟の居候なんだよ? 私。

奥さんはどうするの。
奥さん、あなたと絶対別れたくないって言ってるじゃない。
そんなこと関係ない、私だってあなたのこと大好きだから
私がかくまってあげる――

そんなこと言ってあげられるほど、私は若くないし、
私だって結婚してたことあるから奥さんの気持ちもわかるし、
女だからなおさらわかる。

私の目には、あなたの身勝手だけが映る。

お金はどうするの?
そりゃ私、いろいろしてもらったのは嬉しいよ。
素敵な贈り物ももらったし、
それはとっても嬉しいの。

でも、それで使い切ってしまって
あとは私のヒモ?
私だってそんなに経済力あるわけじゃないもん。
共倒れになるだけじゃない。

20年前だったら、あなたとの恋に無我夢中になれたのかな。

残念だけど、その頃の私、
今よりももっと無責任だったよ。

だって、自分を騙して自分のこと「男だ」ってことにしてたから、
人に対しても誠実であれるわけがないじゃない。
恋をしてても、私はいつもどこか醒めていた。

あなたは今、どこでどうしているんだろう?
実はすごく心配です。
でも、私にしてあげられることは、ほとんどないの。

だから、昨日、電話しなかった。
あなたからもかかってこない。
これが私の答え、って
わかってしまったのかな、あなたにも。


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