原案帳#20(since 1973-) by会津里花
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2002年05月09日(木) 「程度の問題」としての「性別二元論」

★1・「程度の問題」としての「性別二元論」
★2・続・「程度の問題」としての「性別二元論」

★1・「程度の問題」としての「性別二元論」

……なんて、↑大げさなタイトルつけちゃったけれど、
そんなにしっかりした理論的なことを書こうと思っているわけではない。
っていうか、実もフタもないことを言おうとしているのかも。

よく言われること:

「世界中のどこでも、また過去の歴史のどんな時代でも、
『性別』というものは『男と女』の2種類を基盤とした『二元的』なものとして扱われている。
それは、時代や地域を超え、普遍的なことであると推察される」
(簡単に言えば「世の中、男と女だけでできている」)


私はこのことに関して、どうも素直にうなづけない気がしてしまう。
というのは、私はもうかれこれ25年以上もの間、
性の数が二つよりも多い世界
を思い描いてきたからだ。
それは、半ばは科学的に根拠のあること、
あとの半ばは私の頭の中でそれらを勝手に組み合わせた空想、
または科学的なことがらを私なりに勝手に敷衍した推測、
……というような要素で成り立っている。

そのおかげか、私は現実のこの世界に「男」「女」以外の性があることを、
受け入れることができた。
それは「インターセックス(半陰陽)」を代表とする、「男」「女」以外の
多様な性分化だ。

あまり羅列的に扱いたくはない。
なぜなら、多様な性分化には、もしかしたら「典型」として扱うのは無理なのではないか、
と言いたくなるほど多様な差異があって、
なんとなくカテゴライズしたくない気にさせられてしまうから。

でも、あえて羅列的に並べると、医学上カテゴライズされているだけで、
次に挙げるくらいは種類がある。
(覚えている言葉だけで表そうとしたけれど、だんだんごっちゃになってきたので
Pesfis(Peer Support for Intersexuals/2本半陰陽者協会)」というところのコンテンツを引用させてもらいます;
(この色の部分が引用)
でも正直言ってわかりにくかったり書式が不統一だったりするので、
他のサイトも利用します……って、さっきから探してるうちに、気が逸れてしまった(-_-;
しかも、「ずばりこれが正確な説明!」というサイトは、けっきょくなかったりして。
探し方が悪いんでしょうけどね、どーせ)

・真性半陰陽:
 「性染色体の構成は46XX、46XYであってもまた46XX/46XYであっても発生します。
 性腺の構成は、片側卵巣、片側精巣に分化にしていて卵管と精管が発生分化しています。
 また内部生殖器は子宮も前立腺も発生分化し、
 よって外部生殖器の形態は、顕著に男女の判定ができません。


・混合性腺形成不全症:
 「性染色体の構成は、46XY/45XOモザイク核型です。
 性腺は、片側卵精巣と片側線条性腺に発生分化しています。
 内部生殖器には小型子宮が発生分化しています。
 外部生殖器の形態は、陰核が肥大しています。
 女児としと養育されますが、思春期には女性化の発現は表れません。


・アンドロゲン不感症症候群(AIS):
 (完全型)
 「性染色体の構成は、46xy核型です。
 性腺は、両側精巣に分化しますが、内部生殖にはアンドロゲンレセプターに対する反応が無いため
 前立腺が発生分化しません。
 また外部生殖器の形態は陰嚢にも、陰茎にも分化していません。
 そのため未分化時期の外部生殖器の形態で誕生します。
 医師も女性と判定し、戸籍も女性として登録されます。


 (部分型)
 「性染色体の構成は46XY核型です。
 しかしアンドロゲンレセプター反応が部分的にしか反応しません。
 精巣は小型に分化し、停留精巣の場合もあります。
 また内、外部生殖器の形態は個人差があり、尿道下裂を起こしている場合もあります。
 思春期には、女性化が発現が表れます。


・先天性副腎皮質過形成症(CAH):
 「副腎は身体のミレラルバランスを保ったり、
 タンパク質の分解や血糖値の調整をするステロイドホルモンを分泌しています。
 また微量ながら性ホルモンを分泌しています。
 先天性副腎皮質過形成症は、先天的に副腎が肥大しており、
 ステロイド、アンドロゲンを過剰に分泌していて、
 女児の胎児の場合、アンドロゲンが過剰に分泌しているので、
 外部生殖器の男性化が発現して表れて誕生し男児として誤認されました。
 そのため1989年に新生児マス・スクリニークングシステムの指定疾患と指定されました。
 日本での先天性副腎皮質過形成症の発症率は、15000/1であることが解りました。


 (重篤型)
 「脱水、哺乳力の低下、嘔吐、等の様々な症状を発症する塩喪失型や高血圧型は、緊急を要します。

 (単純男性型、無症状型)
 (*ここはPesfisからの引用ではないけれど*
 出生時に顕著な症状が現れず、外見だけで性別判定されて「男子」とされてしまうケースのこと)

 *なお、「Pesfis」では次のようなカテゴリも上の二つと分けて記述している:
 (顕著に陰核が陰茎化し(尿道も含む)陰唇が陰嚢化している CAH)
 *(これも引用ではありません)ただ単に文章だけ読んで「医学的分類」として考えると、
 一見「単純男性型、無症状型」と大きく違わないような気がするけれど、
 「生き方」の面から捉えると、↑前者は「女児として育ててください」とある一方で
 後者は「男児として……」となっていて、
 「程度の問題」でそんなに大きく違ってしまうんだ、とびっくりさせられてしまいます。*

・KS(クラインフェルター症候群):
 「X性染色体の数的変異で、47XXY、48XXXY等の構成で、
 精巣は両側小形精巣に分化していています。
 またクラインフェルター症侯群は、不妊症治療で発見されるのがほとんどです。


 *(引用でなく里花の感想)↑の説明のいちばん下の行は、なんだかちょっと……という気が。
 少なくとも私は、KSの中の少なくない人たちが「不妊」以外の性自認の問題とか余病の問題とかで
 悩んでいる姿を見てきたのです*

・XX男性:
 「1991年に遺伝子SRYが発見され、性腺はSRYによって精巣に分化する事が解った。
 XX男性の場合、遺伝子SRYがX性染色体の塩基配列に転座し、
 性腺を精巣に分化し、男性化が発現します。
 性を性染色体のみで、二分化するのは不可能であるにもかかわらず、
 国際スポーツ大会で、女性選手のみに性染色体の検査が行われています。
 個人の『遺伝子情報保護』に於いて非常に問題である。


 *(これも感想です)Pesfisの記述だと、
 上のように「スポーツにおけるセックスチェック」が問題にされてるけれど、
 (最近話題になった)競艇選手のFtMの人のことと、どこか重なるような気が*

……はぁ。やっと引用だけ終わった。(もう1時間半くらいたっている(-_-;)
たぶん、これで「全て」ではないだろう。

で。
こんなに多くの「性」があるのに、なんで多くの人たちは、性を「男と女の二つ(だけ)」と捉えるのだろうか。
時代も地域も超えてたいていそうであるのは、いったいどうしてなのだろうか。

なんか、難しい言葉がぼろぼろ出てきてしまって、
書いている私もうざったくなってきたので、簡単に済ませちゃおっと。

「男と女だけ」なのではなく、「いちばん多いのが(XXの)女と(XYの)男」なのだ。
それ以外の性の人が少ししかいないということから、
多くの場合、無視されてしまっている、それだけのことなのだ。

ただ、話がなんとなく「きな臭い」感じに思えるのは、
なぜか「生殖」のことと重ねて論じられて、
「男と女だけ」とすることが「正しい」ことであるかのようにされることだ。
なぜそれが「正しい」のか。事実じゃないのに。

「性別は男と女(その二つだけ)」という理解のしかたは、
「日本人は黄色人種だ」というのと同じくらい大ざっぱで、
時には大きな見当外れだったりしてしまうこともある。
(最近サッカー選手で日本の国籍に帰化した人がいるけれど、
その人たちはどう見ても「黄色人種」ではないし、
よくよく見渡せば、たとえば戦国時代以来とか、けっこういろんな時代に
他の人種と混ざったんだろうなあ、と思えるような人は多い)

「性別男女二元論」は、「そういう人が大多数だ」という、程度の問題でしかないのだ。

男女どっちにも見える人、逆にどっちにも見えない人が、
自分の姿どおりに生きることを否定してはいけない。

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★2・続・「程度の問題」としての「性別二元論」

……どうも、すっきりしないので、また書いた。
今度は他人のサイトへの書き込みとして。
相手がそのことをどのくらい知っているか、によってどこまで書いたらいいのかわかりやすくなる。
というわけで、以下、その文章を(最初の前置きだけ削除して)転載。

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『程度の問題』としての『性別二元論』

私には「クライフェルター症候群」の友人が何人かいます。
(*クラインフェルター症候群:略して「KS」と呼ばれることが最近増えてきました。
性染色体が「XXY」「XXXY」など「X」が重複し、なおかつ「Y」もある人のこと)
たぶん、そうとわかってお付き合いする、という点ではかなり多いほうだと思います。
このタイプの人たちの中で
「自分のことを男だとも女だとも思っていない(または、いなかった)」という人を見ていて
なぜかそのことを納得してしまうのです。

KSの人たちは、ひと昔前に言われていたような「典型的」な容貌の人と、そうでない人がいます。
・典型的な人:高身長で華奢、男性的な第二次性徴があまりはっきり出ない
・典型的でない人:とてもさまざま。
 ごくふつうの男性に見える人もいるし、ぱっと見がとても女性的に見える人もいる

……と見てくると、「典型的な人」というのが本当に「典型」かどうかも「?」な気がしてきます。

KSの身体的特徴として、Y染色体(っていうかSRY)のおかげで、というかそのせいで、
内外性器はいちおう「男性型」になる、ということがあります。
このため、医学上はKS=「男性の性分化異常」ということになっています。

ただ、それにも関わらず「性自認」が必ずしも「男性」であるとは限りません。
っていうか、「XY」の男性だったらたぶん1万人のうち9999人くらいは「性自認=男性」だろうと思うのに、
「XXY」のKSでは「男性」という性自認を持つ人がもっともっと少ないみたいなのです。
(比率まではわからないけれど、私が実際に知っている限りでは「半々」くらいみたい!?)

もしかしたら「XY=男性」「XX=女性」という性自認の他に「XX(+X+X…)Y=KS」という別の性自認があって、
ただそれに対して二元論的に構成されているこの社会の認識が適切なカテゴリを持たないために
「どっちかわからない」とか
「かたちは男だけれど性自認はむしろ女に近い」とか、逆に
「男でなければいけない!」と(やや強迫観念に近く)思い込んでいる、とか
さまざまな「ぶれ」として現れてしまうのでは、という気もしてくるぐらいです。

「男性」「女性」は多くの蓄積がある「文化」にまでなっているけれど
KSの場合、少数でしかもばらばらに存在している、
その上「秘匿」している人、気付かないでいる人もとても多いので
「KSという性」が一つの「文化」として成立するほどの情報量がないのでは。
そんな気がします。

こうした私の「性自認に対する成立条件」の経験は、もしかしたら「AIS(精巣女性化症候群)」の人にも何かあてはまるかもしれない……

といっても、AISにはAIS固有の「性分化」における特徴というのがあって、例えば
・AISには「完全型」と「部分型」があって、たぶん「完全型」の人は「自分は女だ」としか思っていない人が圧倒的に多いのでは?
(だって見た目にも「ふつうの女性」にしか見えないだろうし、性器の形状も表面的には全くわからないから)
・一方「部分型」の人は身体的にいくらか男性化するので、性自認も揺らぎやすいのでは?
というようなこともあり、
現実にどのような性自認を構成するか、ということについてはKSと同じにしてしまうことはできないと思いますけど。

やっぱりこまごましたことを書いているうちに本当の趣旨がはっきりしなくなってきてしまったけれど、
タイトルに戻って言うと、
「性別二元論=『男と女』が基盤」
というのは、もしかしたら「量的にどのくらいの人口構成を占めているか」というような「程度の問題」なのではないか、ということです。

だから、たとえばほんの100年ほど前にはその存在さえ知られていなかったKSやAISの人たちが
(しかも、KSやAISの本人が一人生まれると、その人自身は不妊になってしまうので、
「KSの一族」とか「代々AIS」とかいうことがほとんど起きない。
あ、AISが生まれやすい家系、というのはあるらしいです。
いわゆる「女系家族」と呼ばれるような……
ただし、AISの子以外にXXの女の子が生まれないと、その家系は絶えてしまいます)
自分の身近な周囲に自分と同じような人が一人もいない、という状況を超えて
たとえばインターネットでやりとりする、といったかかわり方の中から
自分たちの「性自認=文化」を「量的に」築き上げていくことだって
これからはできるのじゃないか、と思うのです。

私が知る限り、KSの人たちは、その姿がいわゆる「典型的」かどうかということを超えて
独特の共通したメンタリティを持っている部分があるように見えます。
それは「男性的」とか「女性的」とかいうステレオタイプのどちらにも当てはまりません。
ただ、私にはそれがとても「魅力的」であるように思えてならないのでした。
「異性として」なのか「同性として」なのかも、今の私にはよくわからないけれど。
(ちなみに、私自身はたぶん、残念ながらKSじゃないと思います。
子どもできたし、身体的特徴とか、いろんな面で……)

さまざまな性分化多様群(性分化「異常」とも呼びたくない)の人たちの文化が花開いていくことを
祈っています。

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同じことを書き直しているだけなんだけど、
こっちのほうがまだわかりやすいかも。

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