- 2000年05月29日(月)
★1・変身劇 影 と 錯 覚
★1・変身劇 影 と 錯 覚at 2000 05/29 01:25 編集
(1975年の作品なので、幼稚であまりにも恥ずかしい書き方をしているところが多いですけれど、そのまま載せちゃう(*^^*;)
人物 葦山由央(あしやまよしお)
その妻 涼子(りょうこ)
長 男 亮介(りょうすけ)
姪 良子(よしこ)
涼子、亮介、良子は同一人物。
時 知らず
情景 普通の部屋で由央と涼子が仲良さそうに話している。
由央 おまえはいつ見てもきれいだなあ。
涼子 あら…(うつむく)それほどでもないけれども…(ほおを染める)
由央 また、そういうところが好きなんだなあ、ぼくは。
涼子 (微笑みつつ)そういうあなたは、ちょうどアポロンね。お医者で、アーチェリーをやったり、ピアノをやったりするあなたは、ほんとうにアポロン神だわ。……好きよ。
由央 僕もさ…おまえは僕のヴィーナスだ…
――二人、肩を抱きあう。――
暗 転
風景は、殆ど変わらず、只、全部が少しずつ古ぼけている。
あれから、もう二十年経ったのだ。かなり老けた由央が、椅子に深く腰掛けて、やや不安げに煙草を吹かしている。
由央 (独白)私は、あのとき既に何か虚しさを感じていた。あのとき―(目を閉じ)そう。涼子と結婚した、その瞬間からだ!・…それでも、あれが生きている間は、その虚しさも、少しは、…併し、涼子が、私の手によって、息絶えたその瞬間から、…いや、それでも、あれの死顔は、未だ美しかった。…が、涼子の死の瞬間から、私と涼子の間に、憎しみでは無い或る「虚しさ」のような感情があったのを禁じ得なくなって来た。それからもう十年…(首を垂れて暫く何かをこらえる様子。そしてふと頭を上げ、無理に快活そうに)おお、今日は姪の良子が来るんじゃないか!少し頭が弱いが、ピアノだけは上手い子だからなあ。あの子は、今、確か、十五歳だったなあ。
――良子が入って来る(涼子と同一人物、格好と態度が違う。)――
良子 こんにちは。叔父さん、いる?
由央 やあ、良子。相不変(あいかわらず)、元気かい?まあ上がって、ピアノでも弾いて、しゃべったり食べたりしようじゃないか。さあさあ。
良子 おじゃまします。うちのママがね、いっぺんうちにも来るようにって。
由央 ああ、そういえば未だ一度も行って無いね。(独白)美しい娘だ。何処となく涼子に似て…遺伝か何かの関係かな?
良子 叔父さん、何か考えているときの顔、いいわねーえ。
由央 (やや照れる)え?ええ、まあ、うん、いいじゃないか!そうそう、ピアノの弾き比べをやろう。何か弾きなよ。
良子 うーんと…ショパンのポロネーズにしようかしら?一昨日こなしたばっかりだけど。(ピアノのふたを開け、弾きだす。)
由央 (良子の弾くのを見、聞きながら独白)うーん、…何て上手いんだろう。もう、私よりも上手いかも知れない。
良子 (ピアノを弾きながら)ねえ、叔父さん、亮ちゃんは何処に行っちゃったの?あたし会いたいわ。
由央 (少し不安げに)え?私の息子の亮介にか?う〜ん。まあ、そろそろ、戻って来てもいいんだが…(独白)一体、何処で何をしているんだろう?
――良子はピアノを弾き終わり、由央の正面に向かい、まっすぐ由央を凝視(みつ)める。由央は、それを見て、驚いた顔をして、――
由央 あっ?お、おまえは…私の…r、涼子じゃあないか!
良子 (涼子の声で)あなた……!
――二人とも、感慨の表情で見つめあう。――
暗 転
風景は全く変わらない。由央が、驚愕と感慨と不安の混じった顔をしている。髪と服装が、乱れている。
由央 姪のあの顔…あの顔の中に私が見出したのは妻だった。しかも、月の光の中の美しさ、その上、何よりも虚しさが無かった。一体どうしたのだろう?(煙草を一本箱から出して、火を点ける。不安そうに一服)まさか、涼子の霊が憑依していたんでもあるまいし…。
――そこに亮介が現れる。(亮介は、やはり涼子・良子と同一人物。女性が男装をしている)――
亮介 おとうさん!帰りました!
由央 おお、亮介!帰ったのか!話してくれ、外で一体どんな体験を積んで来たんだ?
亮介 家を出て、すぐ盗みをして捕まりました。少年院は辛かったなあ。出所して、今度は人を殺して捕まりました。えっ?保護者?そんなもの居ないと答えちゃったよ。どうにかこうにか出所して、今度は日雇いの労務者になりました。楽しかったですよ。落ちて来る鉄筋の下敷になりそうだったこともあったし、有毒なガスが何処かから漏れて意識不明になったこともありました。
由央 おお、凄い!…何という生活だ!
亮介 そのうち、職を失いました。上野公園でゴロゴロしていました。夜になるといろいろな人間が現れて…ほんとうに楽しい毎日でした。
由央 よく生きていられたなあ!えっ?凄いじゃあないか!
亮介 いえ、驚く程のことではありませんよ。全部嘘ですから。
――亮介は、ふと立ち上がり、由央の真正面に立ち、由央を凝然(じっ)と見つめる。――
由央 あっ!おまえは…いや、誰でもそんなふうに見えるらしいな。この間だって、良子が、…ああ、いや、そんな筈は無い。
亮介 言ってください!僕は、一体何者なんですか?
由央 嫌だ!
亮介 いや、言うんです!僕は、一体何者なんですか?
由央 おまえは…嫌だ!
亮介 言って下さい!(興奮し、涙を流し)早く、僕は、何ですか?早く!
由央 おまえは、おまえは、…おまえは…
亮介 さあ!わたしは、あなたの、何なんですか?言ってください!
由央 おまえは…おまえは私の妻だ!涼子っ!
亮介(ないしは涼子) そうです、あたしは涼子です!(言うなりばったりそこに倒れる。)
暗 転
風景、変わらず。相不変(あいかわらず)普通の部屋。由央が煙を不安そうにふかしながら、何か考えている。傍には亮介が倒れている。
由央 また、妻を見出してしまった…。あの涼子は、熱い涼子だった。私の幻影か?それとも、涼子が、涼子の霊が姿をあらわしたのか?一体、何だろう…?
――亮介が起き上がる。――
亮介 (涼子の声で)あなた…あたし、生き返ったのよ。ねえ、あなた…
由央 おまえはやっぱり妻の涼子か?…ああ、そうだ。月光の中にいるようだ…しかも、おお、虚しさがない!故意に亮介に憑りついたのか?
涼子(亮介の姿の) えっ?この体、亮介なの?ああ、亮介…(泣きながら)この子には、ほんとに辛い思いをさせてしまったわ。赦してちょうだい…
由央 (涙を一滴)いや、私のほうが罪が重い。私は、この手でおまえを死なせたのだ。
涼子 (嗚咽)いえ、…そんなこと、もう…いいのよ。あたしは、わずかでも…あなたに…会えて…良かっ…た…(声は消え、亮介倒れる。そして退場)
――そこに、亮介と殆ど入れ違いに良子が入って来る。――
良子 叔父さん、また来たわよ。
由央 おまえは涼子だろう。
良子 いいえ?どうしたの、一体…あなた…
由央 わっ!やっぱり憑いている…
良子 冗談よ。何をそんなに怖がっているの?(またピアノを弾き始める。弾きながら、)ねえ、伯母さんて、どんな人?亮ちゃんのお母さん。
由央 えっ伯母さん?…どうして、そんなこと尋ねるんだい?
良子 何となく、聞きたくなったの。
由央 (独白)やっぱり憑いているのか?
良子 (涼子の声で)うふふっあなた、あたしは涼子よ。あなたに会いに来たのよ。あなたに…
由央 (瞳孔は大きく開き、冷や汗を流し、四肢は震え、)な、何んだ…一体…私を…おれを、…からかう気か?うるさい!消え失せろ!
――その瞬間、閃光――
暗 転
牢獄。囚人服を着た由央がすみの方にうずくまっている。
由央 (諦めた微笑を顔に浮かべ)結局、今迄のは皆、夢なのか…ふふっ死刑になって、涼子のところに行くんだ。はははっ!(急に沈み込んで)併し、残された亮介はどうするんだろう。それだけが心残りだが…。思えば、亮介は、涼子に酷似していた。一言で「酷似」と言ってしまえる程、酷似していた。それが災いのもと…ふふふっ家出…か。あれっあのとき、涼子は未だ生きていたのか?…いや、死んでいた…のか?それだけ全く忘れてしまった!いや、待てよ?亮介の家出とともに、涼子の姿も見えなくなって…そうだ!今、見えたぞ!妻の涼子も、息子の亮介も、同じ人間だったんだ!…はて、それにしては…涼子が亮介を抱いてあやすのも見た、食事にはいつも三人分の食事が、いつも、揃っていた。なのに…いつの間にか、合体でもしてしまったのだろうか…?莫迦な!人間だぞ、二人とも。併し、妻と息子は一人になってしまった。或る時は妻で、或る時は息子で…………どちらが仮面で、どちらが実物なのか?確か…?
――監守が鍵を開けて入って来る。――
監守 おい、出ろ。面会人がいるぞ。
由央 誰が?
監守 さあね、ご婦人だがね、美人だぜ。歳はおまえさんと同じ位いかね、おまえさん、歳の割には老けてるからなあ。
由央 思い当たらないが…行ってみればわかるかも知れない。(監守に伴われて、面会室へ行く。)
面会人 あなた。
由央 わッ!…一体、一体、どういうことなんだ?
涼子 (穏やかな目で夫を見つめ、)あなた、残念ね。死刑なんでしょ。実を言うとね、あなたの殺したのは只の「影」だったのよ。実物はここにいるわ。
由央 何ということだ!「影」殺しで死刑とは!…ひとつ、尋(き)きたいことがある。亮介はおまえの子だったんだろう、何時合体したんだ?
涼子 ああ、あれはあなたの錯覚よ。それじゃ、さようなら。(去る)
由央 (首を垂れて暫く何かをこらえる様子。そしてふと頭を上げ、無理に快活そうに)ふふっなんだ、欺かれていただけか。(涙を流しながら微笑み)大したことじゃなかったんだ。つまんねえ一生だったなあ。(監守に振り向き)監守さん、意向よ。あの、俺を幸福(しあわせ)にしてくれる死刑台へ。俺を解放してくれる、あの十三段の階段のところまで、一緒に行こう。
――由央、監守に伴われて死刑台へ向かう。――
幕
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(2000年の後日談)
中学生でした。
できるだけ人が読んでも分からないように、心がけていましたが、今読むと、「意図」が見え見えですよね(^^;
それにしても、「家族機能研究所」のどなたか、この戯曲を「分析」してくれないかしら?
そういう点でも、(まさか当時は思いもよりませんでしたが)「見え見え」じゃないの!
あー疲れた。
読んでくださった方、本当にありがとうございました。
めちゃくちゃ退屈で、めちゃくちゃ恥ずかしい内容なので、どうか他ではこのことについては言わないでね。
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