2001年11月12日(月) |
日記を書くのはあらゆることの始め。 |
コオロギさんを殺してしまった。 突然あたしの目の前に飛んできて、ブブブブ…なんて羽音を鳴らすものだから、 動植物に一切興味の無いあたしは、ゴキブリの赤ん坊と間違えてしまった。 だって、コオロギの癖に鳴かないのだから。 そんなの、騙し討ち(?)だわ。 すかさず母の元へ逃げ延びて、殺虫剤を戴いて来た。 真剣な眼差しで必死に殺虫剤を、『彼』に狙いを定めていると、母の曰く、 「あらっ、これコオロギよ」。 それは、あたしが奴を殺そうと決意する前に言うて下さらなきゃ。 こう、と決めたあたしは、大地の巌のように果てしなく頑固で――。 結局、そのまま焦点定めてぶっ放してしまいました、殺虫剤。 ごめんね、コオロギさん。 そんな悪意は無かったの。 ちょっとした誤解から人生全てが狂ってしまうのは、よくあることなのよ。 秋の風物詩を殺生してしまった罪悪感はなかなかのもので、 あたしはひっそりと『彼』の葬儀をあげました。 夜のうすら寒い中、庭に出て、遺体を包んだささやかなティッシュペイパァを燃やし、 追悼の讃美歌を歌って「アーメン」なんてお祈りも捧げました。 どうぞ、成仏して下さい……。(仏・基督混合でごめんよ)
けれど、冬の夜は好き。 冬の匂いがするから好き。 嗅覚と記憶は繋がっているらしい。それを実感する。 冬の夜、ふと家を出た拍子に冬の匂いを感じて、昨年の冬の記憶を掘り出してしまう。 冬生まれのあたしは、紅葉の秋よりも、草木の芽吹く春よりも、空の晴れ渡る夏よりも、 人々の忙しなく行き交う師走が好き。 街角をたくさんの人々が忙しそうに歩き回るのは好きです。 クリスマスなんて、サラリーマンのお父さん方が、 大きなクリスマスケーキの箱を持って家路を急いでいて素敵。 みんな、帰るべき場所に迷わず帰っていくのね、と思うと安心する。 家族にお土産を持って帰るのね、お父さん、と思うと酷く嬉しくなる。 ささやかなことが嬉しいと感じられる、その時の自分の心の余裕にもまた嬉しくなる。 まだ11月の半ばだけれど、そろそろマフラーをつけ始める人たちが増えてきて、 冬の予感はあたしを幸せにしてくれます。
そういえば今日のことはもう一つあって。 ウチの学校をご贔屓にして下さってたサウジアラビア大使、クルディー氏が 任期を終え、母国へお帰りになるとかで、最後にご来校なさったの。 イインチョのお仕事で、礼拝の最後にわざわざステージ上で花束渡したり。 予め執行部でメッセージカードをお作りしたり。 最後には、正門から多くの生徒・教職員でお見送りまで致しました。 記者の方々とかたくさんいらしてて、びっくりしました。 そうか、大使との交流だから、外務省が関わってるんだよな……案外、大変な事であることを今更認識。 大使がいらっしゃる度に、我々高校執行部と中学五人委員会は色々とお仕事が増えて大変だったけれど、 何故だか不思議に憎めない大使のチャーミングな人柄が、 仕事を全く苦に思わせなかったです。 寧ろ、今回が最後のご来校だと思うと、一抹の寂しさが残った。 王子らしい天真爛漫さの為せる業かしら。 今は中東は大変な時局ですが、サウジアラビアへ帰られても、 どうぞ健康で幸せにお過ごし下さい。 あなたの好きな遥か日本の空の下で、ささやかに祈っております。
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