いい年になってから出会った魔法だ。 フェンスに囲まれた四角い空き地が一年に一度だけ、赤ずきんの挿絵で見たような。
一面の花をとりどりに咲かす。
初めて見たのは五年前。 今もあるだろうか。 あるといい。
目を疑う、その美しいトラップ。
人の持つ力を思い出す。 そうだ暗闇に夜明けを。 黒い土からの芽生えを。 信じて待つという力のことをだ。
四角い空き地に。 とりどりの種を。
一年に一度。 一瞬だっていい。
命の花を。 笑顔を。
それくらい本当は生きるってことは困難な「ただの旅」なんだろう。
四角い大地を染めるかりそめの楽園の真上の空を。
俺は今から予約して。 精一杯生きたあとそこから見下ろして。 酒を飲んでやるんだ。
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