喫煙所で、自分で咥えた煙草で火傷した私の左の小指を、乱暴に取って其処に跪き、緩くキスした、私の年より15年上の人が居た。年末からの時間の過ぎをそうやって誤魔化すつもりなのか、それとも単に趣味なのか、単純なのか、我が物顔でフロアを闊歩する彼の何て情けない痛ましい姿、そんな思いで彼の口から指を引き抜いた私は、図らずもその一瞬だけ彼を愛しく感じてしまった。そうして私はこう言ったのだけど、「指突っ込むよ、口に」。さて、彼はどう思ったろう。其の次の瞬間に、コートを着ながら眠さにふらつく私と、笑いながらフィリップモリスを吸う彼が居ただけなのだけど。